JR九州の株式上場を急げ! 売却益を「整備新幹線の財源に」の声

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   JR九州の株式上場問題がにわかに脚光を浴びている。JR九州の全株式は国が保有するが、与党の一部が整備新幹線の開業を前倒しするための財源として、JR九州上場の売却益を使う検討を始めたためだ。

   JR九州自身も2016年度までの株式上場を目指すと表明しており、上場議論は本格化する見通し。ただ、JR九州は本業の鉄道事業で赤字から抜け出せず、上場に向けた議論が混迷する可能性もある。

鉄道事業の赤字を副業でカバー

いざ、株式上場へ(画像はイメージ)
いざ、株式上場へ(画像はイメージ)

   JR九州の社長に今年6月に就任した青柳俊彦社長は「国鉄民営化は株式上場をして合格点だ」と強調、2016年度までの上場を最重要課題と位置づけている。JR九州は既に経営計画でも2016年度までの上場を目指すことを盛り込んでおり、全社を挙げて上場を実現したい考えだ。

   しかし、JR九州の本丸ともいえる鉄道事業は赤字が解消されない状態が続いている。JR九州の2014年3月期連結決算は、売上高が前期比3.5%増の3548億円と4期連続で過去最高を更新、営業利益も同19.7%増の90億円で2期ぶりの増益を確保した。しかし、そんな好調な決算は、マンション販売をはじめとした不動産事業やコンビニエンスストア展開などの小売事業といった鉄道事業以外の堅調さが主な要因だ。

   鉄道事業そのものは赤字のローカル線を抱えている影響などで、149億円の営業赤字に陥っている。国が設定している「経営安定資金」の運用益などで何とかこの赤字を穴埋めしているのが実態といえる。

経営安定基金を保有したまま上場できるのか

   海外の投資家などは、本業の収益力改善の見通しに関心を寄せているとされる。鉄道事業以外で収益を上げ、安定的な経営ができる環境が整ってきたとはいえ、鉄道事業の赤字解消は上場に向けた重要な課題だ。JR九州は赤字解消のため、インターネット販売の強化でみどりの窓口の数を減らし、コスト削減を徹底する、などとしている。ただ、赤字路線の廃止などに踏み込む考えはなく、抜本的な対策は見出せていない。引き続き厳しい状況が続くことは避けられない。

   特に、上場に向け焦点の一つになるのが、JR九州が経営安定基金を保有したまま上場できるかどうかだ。経営安定基金は、九州と、北海道、四国のJR3島会社について、国鉄の分割・民営化に伴い、国が設けたもので、ローカル線の赤字を基金の運用収益で補おうという仕組みだ。北海道、四国に比べ、九州は鉄道以外の事業でもかなり稼げているので、経営の健全度ははるかに高いが、それでも、2014年3月期の基金の運用益は120億円にもなる。しかも、この基金、世の中の金利水準に関係なく一定の収益が上がる"からくり"がある。基金の一部を独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」に高利回りで貸し付けて運用しているのだ。

売却総額は「5000億円規模に上る」との試算も

   JR九州は基金を維持したまま上場したい意向だが、基金頼みの体質がパブリックな上場企業にふさわしいのか、疑問は絶えない。政府・与党の一部からも「慎重に対応すべき」との声が出ている。

   与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチームは北海道新幹線や北陸新幹線などを5年程度前倒しで開業するための財源探しに躍起で、JR九州の上場益に目を付け、7月から本格的な議論を始めたところだ。

   JR九州の上場が実現した場合、JRの上場としては1997年のJR東海以来、約20年ぶり。株式売却総額は「5000億円規模に上る」との試算もあり、注目度は高まっている。

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