経営安定基金を保有したまま上場できるのか
海外の投資家などは、本業の収益力改善の見通しに関心を寄せているとされる。鉄道事業以外で収益を上げ、安定的な経営ができる環境が整ってきたとはいえ、鉄道事業の赤字解消は上場に向けた重要な課題だ。JR九州は赤字解消のため、インターネット販売の強化でみどりの窓口の数を減らし、コスト削減を徹底する、などとしている。ただ、赤字路線の廃止などに踏み込む考えはなく、抜本的な対策は見出せていない。引き続き厳しい状況が続くことは避けられない。
特に、上場に向け焦点の一つになるのが、JR九州が経営安定基金を保有したまま上場できるかどうかだ。経営安定基金は、九州と、北海道、四国のJR3島会社について、国鉄の分割・民営化に伴い、国が設けたもので、ローカル線の赤字を基金の運用収益で補おうという仕組みだ。北海道、四国に比べ、九州は鉄道以外の事業でもかなり稼げているので、経営の健全度ははるかに高いが、それでも、2014年3月期の基金の運用益は120億円にもなる。しかも、この基金、世の中の金利水準に関係なく一定の収益が上がる"からくり"がある。基金の一部を独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」に高利回りで貸し付けて運用しているのだ。