ビール市場に異変が起きている 「第3のビール」初のマイナス、キリンが一人負け

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   ビール類飲料市場に二つの異変が起きている。一つは価格が安い「第3のビール」の失速。もう一つはキリンビールの「ひとり負け」だ。

   この傾向が定着するのか、それとも一過性か。業界関係者の最大の関心事だ。

「価格より価値」を求める消費者が増える?

キリンビール、不振は脱せるか(画像はイメージ)
キリンビール、不振は脱せるか(画像はイメージ)

   ビール大手各社が一斉に発表した2014年上半期(1~6月)のビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)の課税済み出荷量によると、全体の出荷量は前年同期比1.2%減の1億9685万ケース(1ケースは大瓶20本換算)で、上半期としては現行統計が始まった1992年以来、過去最少となった。全体のパイの縮小は、ここ数年の傾向で驚きは全くない。雨が多かった6月に限ると、6.5%減と大きく落ち込んだが、これも「想定の範囲内」といったところだろう。

   内訳は、ビールが0.2%増の9625万ケースとまずまずの健闘。発泡酒は5.2%減の2633万ケースだが、近年縮小が顕著で、こちらも致し方ない。ちょっとした「サプライズ」は低価格を武器に成長してきた「第3のビール」が、1.6%減の7426万ケースとマイナスに沈んだこと。2003年に登場して以来、初めて前年実績を下回った。

   酒税が安い第3のビールは、小売り価格がビールより4割程度安いことが売り。各社の研究開発努力で、よりビールに近い味を実現していることもあり、「デフレ不況」下でも、順調に販売数量を伸ばした。ところがこのところの景気回復基調で「価格より価値」を求める消費者が増えてきた。サントリー酒類の「ザ・プレミアム・モルツ」やサッポロビールの「エビス」は前年比2~3%程度増加。アサヒビールの「ドライプレミアム」などの新勢力も台頭し、プレミアムビール市場は活気づいている。

   第3のビール自体、大型の新商品がなかったことも響いた。サッポロがヒット商品「極ZERO(ゴクゼロ)」を、国税庁との見解の違いにより、5月の製造分で販売を中止したことも影響した。

アサヒがさらにシェア伸ばす

   業界関係者をより驚かせたのは、キリンの不振ぶり。メーカー別シェアはアサヒが前年同期比1.0ポイント増の38.1%、サントリーは0.4ポイント増の15.5%、サッポロが0.5ポイント増の12.4%と、いずれも拡大したが、キリンは1.9ポイント減の33.1%だった。順位に変動はなかったが、「キリンひとり負け」が際立つ形となった。

   キリンはビール3.3%減、発泡酒6.8%減、第3のビールに至っては9.4%減だった。キリンが掲げた戦略は、主力ビール「一番搾り」に人と金を集中させること。戦略自体が誤りと断じることはできないが、他のブランド拡販が後回しとなり、「ラガー」や「淡麗<生>」などの販売を大きく減らした。昨年5月に発売してヒットした「澄みきり」も失速。「麦のごちそう」などの販売を終了したことも響いた。サッカー・ワールドカップ(W杯)に合わせ、日本代表選手をデザインした「応援缶」を発売したが、日本代表は1次リーグで敗退し、販売数量を押し上げる効果は限られた。

   1990年代までビール業界の「王者」として君臨したキリン。首位のアサヒの背中は遠くなる一方だが、商品開発力では他社も一目置く「地力」があることも確かだ。苦境に立たされたキリンがどう巻き返すのか、注目される。

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