アサヒがさらにシェア伸ばす
業界関係者をより驚かせたのは、キリンの不振ぶり。メーカー別シェアはアサヒが前年同期比1.0ポイント増の38.1%、サントリーは0.4ポイント増の15.5%、サッポロが0.5ポイント増の12.4%と、いずれも拡大したが、キリンは1.9ポイント減の33.1%だった。順位に変動はなかったが、「キリンひとり負け」が際立つ形となった。
キリンはビール3.3%減、発泡酒6.8%減、第3のビールに至っては9.4%減だった。キリンが掲げた戦略は、主力ビール「一番搾り」に人と金を集中させること。戦略自体が誤りと断じることはできないが、他のブランド拡販が後回しとなり、「ラガー」や「淡麗<生>」などの販売を大きく減らした。昨年5月に発売してヒットした「澄みきり」も失速。「麦のごちそう」などの販売を終了したことも響いた。サッカー・ワールドカップ(W杯)に合わせ、日本代表選手をデザインした「応援缶」を発売したが、日本代表は1次リーグで敗退し、販売数量を押し上げる効果は限られた。
1990年代までビール業界の「王者」として君臨したキリン。首位のアサヒの背中は遠くなる一方だが、商品開発力では他社も一目置く「地力」があることも確かだ。苦境に立たされたキリンがどう巻き返すのか、注目される。