昨今、不妊に悩む男性が増えているという。2013年に発表されたフランスの調査では、1989年から2005年までの17年間で、男性の精液1mLに含まれる精子の数が年1.9%の割合で減少しているという結果も出た。
フジテレビ系の情報番組「とくダネ!」でも男性の不妊治療が特集されたのだが、この内容に「重大な相違点」があるとして、特集で取り上げられたクリニックの医師が猛反論している。
番組に登場した医師「全く監修にかかわっていない」
14年7月14日の「とくダネ!」は、「精子に異常!?不妊治療最前線」と題した特集を放送した。
郵送で送られてきた精液を検査するという、名古屋市内の「精子郵送検査会社OES」の業務や、大阪市の生殖医療専門クリニック「リプロダクションクリニック大阪」で不妊治療を受ける1組の夫婦に注目した内容だった。
放送後、番組でも実名で紹介されたリプロダクションクリニック大阪の石川智基医師が、「心配していたことが、、」というタイトルのブログを更新した。
「『とくダネ!』の中の当院が取りあげられている内容に関しまして、事実と異なる点や、説明の不足、他会社と当院で行っている検査などを混同され兼ねない点など、重大な問題がありました」。さらに「私自身全く監修にかかわって」いないという。
まず、「郵送の精液検査は絶対ありえません」。時間が経つと精子の形態が変わり、正確な運動率も出ず、精子の有無しかわからないという。OESでは常温で郵送された精液が冷蔵機能の付いたポストに入れられるとのことだったが、精液は32~34度で保管するのがベストで、「冷蔵するのはダメです。さらに郵送は常温で郵送後に冷蔵などもっての他」と指摘している。「今回の前半部分はあまりに取材が不足していると言わざるを得ません。抗議対象になり得る内容です」と糾弾した。
そのほか、男性不妊治療医が45人とのナレーションには「ありえません。認定されている専門医が45人なのです」。クリニックの患者として紹介された、精子死滅症の男性の精液検査の映像については「無精子症に見えてしまいます。精子がいるが動いていない、という映像を使うべきでした。その映像は当院から提供してありました」など、放送内容について細かい指摘を連ねている。
郵送検査会社「本検査の前の準備段階として利用してもらえれば」
これに対し、産婦人科に従事するツイッターユーザーは「これ、あまりな内容なので訂正の番組作った方がいいと思う…郵送で精液検査はできませんので…」「精液検査は採れたてが一番良いのに、郵送なんてあり得ない…うちの病院では禁欲4~5日後、必ず手淫で採取したものを出来るだけ人肌の温度を保って持って来てもらってます。冷蔵なんてもってのほか!」と、賛同のツイートを寄せた。
厳しい指摘が上がった精子の郵送検査だが、番組で紹介された「OES」に見解を聞くことができた。
OESでは、元々精子の運動率や生存率、pH値などの検査は行えないとしている。ただ、OESで調べられる精子の数や濃度については、郵送や冷蔵保存で変化することはないという。また、採取して1~2時間以内の精液を見る通常の検査では、精子の動きが早くて数を確認するのは難しい。病院では機械で数を調べているところもあるが、OESでは臨床検査技師の目視で確認しているため、時間が経っている方が正確に調べられるとのことだ。
番組で紹介されたOES利用者の検査結果では、精子の正常形態率が25%で、テロップで「通常男性は40~60%」との説明が入ったが、石川医師は「通常男性は40-60%というのも誤り」としていた。これについては「番組側が色々な病院を回って独自に出した数字らしい」とのことで、OESから提供した数字ではないそうだ。
郵送検査の意義については、「病院に行って精液の検査をするのは、男性にとってはまだ敷居が高い。本検査を受ける前の準備段階、きっかけとして、郵送検査を利用してもらえれば」と話していた。
なお、フジテレビは今回の指摘について、J-CASTニュースの取材に対し「各所に充分な取材を行った上で放送しておりますが、一部見解の相違などもあるようですので、継続して話し合いをさせて頂いております」との回答だった。