「潮騒を聞いてホッとした」 災害公営住宅への入居【福島・いわき発】

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   わが家から小名浜へ行くには、主に沿岸部の県道小名浜四倉線を利用する。津波被害に遭った沼ノ内、薄磯、豊間、永崎地区などを通る。


   県道沿いに沼ノ内の災害公営住宅が建った。豊間の災害公営住宅も1棟が完成し、さらに別棟の建設が進められている(=写真)。薄磯の住宅は県道から海岸寄りの山あいにできる。


   この3地区の災害公営住宅では、完成棟から被災者の入居が始まった。「潮騒を聞いてホッとした」という入居者の話が伝わってきた。


   大津波に襲われる前は、いつも暮らしのなかに潮騒が響いていた。寄せては返す波のリズムが体に刻まれていた。3・11後は、内陸部での避難生活を余儀なくされた。潮騒が聞こえなくなった。何か気の抜けたような暮らしだったのだろう。


   きのう(6月29日)の夏井川渓谷は、雨で流れが増水し、堰(せき)をオーバーしながら、「ドドドド」と大きな瀬音を散らしていた。


   潮騒を子守唄代わりに聞いて育った豊間の人間が2人、春に夏井川渓谷のわが隠居(無量庵)で仕事をした。潮騒とちがって、早瀬の音が途切れなく続く。仕事をしていて落ち着かなかったという。ふだんの何倍も大きな瀬音を聞きながら、その話を思い出した。


   海の人間とは逆のケースもある。山国で生まれ育った人間が、潮騒の聞こえる海辺の家に泊まった。潮騒が耳にさわって眠られたものではなかった。10代後半のときの経験だ。


   人はそれぞれの環境になじんで生きていく。環境と内面は分かちがたく結ばれている。潮騒と瀬音にもそのことが言える。

(タカじい)



タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
■ブログ http://iwakiland.blogspot.com/

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