「5月機械受注は過去最大の減少幅」という報道があった。7月10日(2014年)に内閣府が発表した機械受注統計で、5月国内民需(船舶・電力を除くベース)は、対前月比19.5%減となった。これを受けて、内閣府は、機械受注の基調判断を「増加傾向にある」から「増加傾向に足踏みがみられる」に変更した。
先行きについては、楽観的だというエコノミストもいるようだが、筆者にはその根拠はさっぱりわからない。データを見る限り、安倍政権発足時に戻った感じだ。
消費税増税後の反動減からの回復とは思ってはいけない
7月9日、ニッポン放送のザ・ボイス「そこまで言うか!」に出演して話したが、新聞報道では「6月景気ウォッチャー調査 2か月連続で上昇」と楽観的だ。しかし、この報道は指標の読み方に問題がある。これは、すごく落ちた時からの上昇であって、その前の水準には戻っていないから、消費税増税後の反動減からの回復とは思ってはいけない。
この他にも、悪い指標はまだある。6月27日に総務省から公表された家計調査だ。同じ日に労働力調査、消費者物価指数調査が公表されたためか、家計調査の新聞報道は扱いが小さかった。
1世帯当たりの消費支出(2人以上世帯)について、物価変動を除いた実質で前年同月比8.0%減った。長期のデータをみるため、家計調査内の消費水準指数でみてみよう。その統計が容易にとれる1981年以降の33年間では、5月の数字は、最悪だった東日本大震災直後の2011年3月に次ぐワースト2位の数字だ。4月と5月の2か月の落ち込みをみると、過去33年間で最悪だ。
ところが、総務省も「想定の範囲内の動き」という。こんな33年間に1回しか起こらないような、確率では0.3%程度の2か月連続の大きなマイナスを事前に想定していたのだろうか。そんなことはまずないだろう。
内需は、民間消費、民間投資、公共部門だ。民間消費と民間投資で危なくなったら、公共部門だけで支えられない。
どうなる「消費税再増税の判断」
今年(2014年)の年末には、消費税の再増税の判断を行う。といっても、政治的には、消費税再増税は、民主党政権時代に法律も通っており「決着済み」ともいえよう(正確にいえば、10%への再増税をひっくり返すには、新たな法律を国会で通さなければいけないという意味)。
もし景気の落ち込みがあっても、それを逆手にとって、与党政治家は予算の増額を求めてくるだけだろう。今から、増税しないと国債暴落があると発言する政治家もいるが、「増税して景気を悪くするほうが、財政再建が遠のき国債が暴落する」というロジックは理解できるものの、政治家発言に経済的な意味はないと理解すべきだ。要するに、オレのところに予算を回せといっているだけなのだ。
再増税の判断は、7-9月期のGDPで判断するというが、4-6月期と比べて(前期比)プラスになっていると程度で再増税になったら悲劇だ。昨(2013)年7-9月期と比べて(前年同期比)プラスを最低条件にするべきだ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。