被害者の一部は訴訟を起こす
また、症状が重く、完治までに時間がかかりそうな被害者には、交通事故などで後遺症が生じた際に裁判で用いられる基準に基づき、後遺症慰謝料を支払うことも決定。「被害者の負担を軽減し、治療に専念してもらうため」(カネボウ化粧品)としている。対象者は約4000人に上る見通しだ。
ただ、被害者の一部は全国で訴訟を起こしており、混乱は収拾できていない。そもそも白斑が発祥する仕組みは解明されておらず、裁判自体が簡単ではないのも現実だ。
一方、被害者への治療費の支払いなどが花王やカネボウの経営に与える影響は小さくない。花王の2013年12月期の化粧品事業は1.1%の減収で、カネボウの買い控えなどによる減少分は120億円前後に膨らんだという。今後は後遺症慰謝料の支払いも莫大な額に上るとみられ、花王の利益の多くが吹き飛ぶ可能性もある。
さらに痛手なのは、業界では売れ筋であり、市場が拡大している美白化粧品市場に大きく踏み込めないことだ。美白化粧品市場は年間2000億円規模に上るとされており、化粧品各社が最も重視している対象だ。カネボウは白斑問題の大きさを考え、当面は新たな美白化粧品を発売しない方針を固めており、痛手は大きい。