北朝鮮の金正恩第1書記に異変が起きている。祖父の金日成主席の死去から20年にあたる2014年7月8日に行われた追悼行事で、右足をひきずりながら歩く姿を国営朝鮮中央テレビが放送したのだ。
一国の指導者の健康状態は周辺諸国の関心事で、早くも「心臓病」「椎間板ヘルニア」「捻挫」など、様々な説が唱えられている。
5月上旬配信の映像では異変はなかった
この日は、正恩氏は日付が変わるのと同時に金日成主席と金正日総書記が眠る錦繍山(クムスサン)太陽宮殿を参拝し、日中には平壌体育館で開かれた中央追慕大会に出席した。いずれの様子もテレビで放映され、正恩氏が足を引きずっていることがわかる。特に中央追慕大会の映像では、13年12月に開かれた金正日氏の中央追慕大会と比べて明らかに歩くスピードが落ちていることがわかる。5月上旬には、専用機で「戦闘飛行術競技大会」を視察したことが動画で伝えられているが、その際は特に歩き方に異変はなかった。ここ1か月半ほどで、正恩氏に「何かあった」ということになる。
父親の正日氏は長く糖尿病を患っていたと伝えられている上、正恩氏自身をめぐっても、14年2月頃に韓国メディアか相次いで「肥満説」を唱え、「叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑した『ストレス太り』なのでは」といった声も出ていた。そのため、韓国メディアでは早くも正恩氏の健康問題が指摘されている。
例えば中央日報は、足を引きずっているのは「持病の心臓病・糖尿などや飲みすぎによる痛風の症状」だとみる。東亜日報は若干慎重で、韓国政府関係者の話として
「繰り返し足を引きずるかどうかを確認できて初めて健康不安の有無を確認することができる。足首をひねったり、過剰体重で関節や腰に異常が生じた可能性も推定できるが、確認はできない」
と伝えている。記事の中では整形外科医が「一般的に足を引きずる原因はとても多い」上に「画面だけでは原因は分かりにくい」としながらも、可能性として椎間板ヘルニアや血流異常を挙げた。
地方視察でバランス崩してつまづいた??
聯合ニュースは、国営テレビが正恩氏の歩く様子を特に隠すことなく放送したことから、「持病ではなく、捻挫などの一時的なもの」だとみている。
正恩氏は視察に出かける機会が多く、7月に入ってから朝鮮中央通信が報じただけでも、
「花島防御隊を視察」(7月1日) 「海軍指揮メンバーの水泳能力判定訓練を指導」(7月2日)
「陸軍、海軍、航空・対空軍の島上陸戦闘訓練を指導」(7月5日)
「松涛園国際少年団キャンプ場を現地指導」(7月6日)
「熊島防御隊を視察」(7月7日)
といった具合だ。多くが東海岸への地方出張だ。
重要行事なので不調をおして出席せざるを得なかった
コリア・レポートの辺真一編集長も、
「北朝鮮では特に地方で道路事情が悪い上、正恩氏は肥満が指摘されているので、バランスを崩して足をつまづくなどしたのでは。実際、額にはキズがある。本来ならば休みを取ってもいいのでしょうが、金日成主席の命日という重要行事には不調をおしてでも出席せざるを得なくなったのでしょう」
とやはり「捻挫説」だ。確かに7月8日未明に錦繍山太陽宮殿を参拝した際の写真では、額の上部に赤く変色している場所が確認できる。