有名人のプライベートを無断で写真撮影し、ツイッターなどへ投稿する行為が多発している。
一般人による撮影のみならず、訪れた店の従業員が「流出」させることもある。これらの行為には、どのような問題点があるのか。IT関連に詳しい弁護士に聞いてみた。
パブリシティー権、肖像権、プライバシー権侵害の恐れ
有名人への無断撮影は、この1か月間でも頻発している。きゃりーぱみゅぱみゅさん(21)は2014年6月15日、買い物中に無断撮影されたと告白。無断撮影のツイートを引用し、「こうゆう人には塩対応(編注:そっけない対応)だよ。写真も断ったのにさ」などと非難した。
21日には市川海老蔵さん(36)が新大阪駅で年配の女性から「許可なく携帯でパシリ」と撮影されたと明かし、有吉弘行さん(40)も22日の「SUNDAY NIGHT DREAMER」(JFN系)で、飲食店で年配の男性から無断撮影されたと明かした。7月4日にはダレノガレ明美さん(23)も「電車で盗撮されてTwitterに載せられた。犯罪ですよ!」とツイートしている。
IT関連法務に詳しい「カクイ法律事務所」の石井邦尚弁護士に話を聞くと、無断撮影は「プライバシー権」や「パブリシティー権」、「肖像権」などに抵触する可能性があるという。プライバシー権は私生活をみだりに公開されない権利、パブリシティー権は肖像などが持つ経済的価値を保護する権利、肖像権は肖像そのものが持つ権利だ。
「公益目的」なら許される場合も
公の人については、学者によって一定の程度でプライバシー権などを放棄しているとする見解もあり、
「原則では肖像権侵害になるようなことでも、『公益目的』といったことがあれば許される」
といった「例外」がある。有名人は言動が世の中に影響することなどもあり、一般人よりもその例外に当たりやすいが、食事中など「完全に誰が見てもプライベートだとわかる状態」の場合には、公益目的とは考えられず、プライバシー権侵害などにあたる可能性が高いという。
「路上を歩いているのを撮られた」のと、「お店の中でプライベートな時間を過ごしているときに撮られた」のでは、プライバシー権侵害などについての判断は違ってくる可能性があるが、「ケースバイケースで見ていくしかない」と説明する。
パブリシティー権とは、人格が持つ「顧客吸引力」の経済的価値を保護する権利だ。有名人の知名度が上がると、氏名や肖像だけでも商品価値を持つ。宣伝に使えば、顧客を集め、商品価値を高めるなどの経済的効果がある。そのため無断撮影した写真を、自分のブログで気楽に掲載したりすると権利侵害となってしまう場合がある。パブリシティー権が有名人だけに認められている一方、肖像権はだれにもある。一般人でも無断撮影されて、正当な目的なく写真を拡散されれば、肖像権の侵害にあたる。
街で偶然、有名人をみかけると、ついうれしくなって写真撮影などしがちだが、基本は相手が一般人でも有名人でも、嫌がられない行動を心掛けるということに尽きるようだ。