横浜DeNAベイスターズのユリエスキ・グリエル内野手(30)が2014年7月7日からの沖縄遠征に行かず、横浜で「お留守番」していることが明らかになった。
理由は台風8号接近による飛行機の揺れへの不安だ。8日の巨人戦は台風の影響で中止になったが、9日の試合は欠場。復帰は11日のヤクルト戦からになるという。
「飛行機恐怖症」と診断
グリエル選手はキューバ政府がプロスポーツ選手の海外移籍を容認してから日本球界入りを果たした2人目の選手で、自国では「キューバ野球界最高の選手」「キューバの至宝」ともいわれるスターだ。DeNAにとってはまさにチーム浮上の切り札。当然活躍に期待をかけるが、そんな選手にも思わぬ弱点があった。
実は「飛行機」が苦手だというのだ。
もちろん、これまでも飛行機で移動することはあった。そもそも来日した5月31日には21時間にも及ぶ長旅をしており、到着後には「(飛行機内では)日本でどのようにプレーするかを考えていた」とコメントするなど余裕もみせていた。だが今回ばかりは本人がはっきりと「NO」サインを出した。原因は台風だ。
DeNAは7月8日と9日の2日間、沖縄県那覇市の「沖縄セルラースタジアム那覇」で読売ジャイアンツ戦があるため、7日に沖縄入りする予定だった。だが出発の数日前、大型台風8号が接近していることを知ったグリエル選手は動揺してしまったらしい。
球団によると、グリエル選手は7月5日の阪神戦終了後に沖縄への飛行機移動を拒否する意向を伝えた。翌日にチームドクターを交えて相談した結果、球団側は今回の遠征帯同を見送ることに決めた。7日には横浜市内の病院で検査を受け「飛行機恐怖症」と診断されたという。
「飛行機恐怖症」は精神疾患である「恐怖症」の一種で、飛行機に搭乗することに強い恐怖を感じるというもの。飛行機事故に遭遇した経験がある場合や、搭乗時の極度の揺れがトラウマになった場合、事故に巻き込まれた体験を他人から聞いた場合など発症原因はさまざまだ。
球団によれば、グリエル選手は小さいころから飛行機が好きではなく、数年前に悪天候の影響で乗っていた飛行機が大きく揺れて以来、悪天候等で大きな揺れが予想される飛行機は怖く感じるようになったと説明しているそうだ。「台風が来る中で飛行機は考えられない。危険だ」と漏らしていたとも報じられており、かなりの拒否反応を示していたことがうかがえる。
ハリケーン被害の恐怖も脳裏に?
グリエル選手がこれほどまで不安を訴えた背景には、台風に関する認識の違いがあったとも考えられそうだ。
キューバのあるカリブ海はハリケーンの中心的な発生地として知られる。アメリカ南東部を襲い1800人以上の死者を出した「ハリケーン・カトリーナ」は記憶に新しいが、キューバも当然のことながら毎年ハリケーンの被害を受けているだろう。その点を考慮すると台風8号接近のニュース自体が、グリエル選手の目にはかなり恐ろしいものに映っていたのかもしれない。
台風接近時の一般的な乗客の反応はどうかというと、台風が頻発する日本では航空会社の判断に対する信頼もあるのか、それほど怖がる人はいないようだ。国内大手航空会社の20代客室乗務員は「台風が接近している際は大体May return(出発港に戻る可能性のあるフライト)がかかるので、揺れの事よりもちゃんと到着できるかどうかを心配される方が多いですね。巡行高度に達すれば台風が来ていてもほとんど揺れはありませんから」と話す。
とはいえ飛行機恐怖症に苦しむグリエル選手にとっては大問題だ。不参加については本人も残念がっているようで、球団を通じ「沖縄の遠征は以前から楽しみにしていたけど、チームドクターと相談した上で、今回は帯同を見合わせることを決断した。チームから離れることになり、チームメイトとファンの皆には申し訳ないが、11日からのヤクルト戦で万全の状態で臨めるように、しっかりと横浜で準備したい」とコメントしている。