韓国・北朝鮮ウォッチャーとして知られる武貞秀士・拓殖大学海外事情研究所特任教授らが2014年7月8日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で講演した。
北朝鮮が拉致被害者調査のための特別調査委員会を立ち上げたことに関連して、武貞氏は政府認定の拉致被害者12人のうち、少なくとも3~5人について帰国できる状態にあり、9~10月にも安倍晋三首相が訪朝する可能性があるとの見方を示した。
「拉致問題をめぐる日朝協議は未来永劫続くと思う」
武貞氏は
「金正恩第1書記はすでに権力を掌握しており、リーダー間に権力闘争はない」
と、金第1書記の権力基盤をは盤石だとみており、この権力基盤を背景に日朝協議が前進しているとみる。
「日朝関係の未来は悲観していない。日朝関係は変化しており、北朝鮮は国内的にも変化している。金正恩第1書記は北朝鮮を国際化しようとしている。その結果としてもたらされたのが2014年5月の(ストックホルムでの)合意だ」
記者からは、
「安倍首相は『全ての拉致被害者の家族が子どもを抱きしめる日がやってくるまで、私たちの使命は終わらない』 と言っているが、(特定失踪者を含むと)860人もいる。不可能な仕事ではないのか」
といった質問も出た。これに対して、武貞氏は、拉致問題は進展が期待できるものの、究極的な解決は困難だとも分析している。その上で、帰国者の人数についてむやみに推測するのは不適切だとしながらも、
「日本人や日本人拉致被害者が何人北朝鮮にいるか、誰にもわからない。安倍首相も知らない。拉致問題をめぐる日朝協議は未来永劫続くと思う。北朝鮮が全ての拉致被害者を調査するのは不可能だからだ。まず日本は、北朝鮮に対して政府認定の12人の拉致被害者の帰国を要求し、そのうち少なくとも3~5人については帰国できる状態だろう。そうすると安倍首相が帰国サポートのために平壌を訪問するだろう。時期は不明だが、9~10月だろう」
と述べた。その上で、拉致問題への取り組みと同時に国交正常化に向けて努力する必要性を強調した。
「拉致問題解決に終わりはないとみているが、同時並行で日朝国交正常化に向けた協議を始める必要がある」