「求人難」倒産、5月だけで3件が発生
物価上昇の要因は、エネルギーコストや輸入価格の上昇だけではない。最近は、企業の「人手不足」による人件費の上昇が、モノの販売価格にハネ返りつつある。
日銀が2014年7月2日に発表した企業短期経済観測調査(短観)の業種別計数によると、販売価格判断指数(DI)は小売業でプラス10、宿泊・飲食サービスはプラス11と2008年6月以来の高水準で、建設はプラス4と1991年12月以来の高い水準だった。
小売りやサービス業では人手不足から、賃金を上げて従業員を確保する動きがあり、それが販売価格の転嫁につながっているとされる。
ただ、人手不足は倒産にまで進展。東京商工リサーチによると、「人手不足」関連倒産は2014年1~5月の累計で114件あった。企業の業績が拡大する一方で、「職人不足による工事の遅滞や中止」、「製造現場での従業員不足による生産の遅れ」、「外食産業での営業時間短縮や店舗閉鎖」など幅広い業種に広がり、とうとう「求人難」による倒産も出てきた。
求人難による倒産は1~5月に5件、そのうち3件が5月に発生。建設業と運輸業、飲食業が倒産した。
企業倒産の増加は、景気を冷やす。同社は、「数はそんなにないのですが、最近、ジワジワと増えてきました。たとえば、ある建設業は受注があるにもかかわらず、また賃金を上げてもなお職人が集まらなかったケースです」と話し、今後増える可能性があるという。
国際金融アナリストの小田切尚登氏は、「政府や日銀が当初イメージしていた、賃金が上がって欲しいモノが買えて、それにより値段が上がる『良いインフレ』ではなく、エネルギーコストや輸入価格の上昇をきっかけとする、いわゆる『悪いインフレ』に陥っているのが現状といえます」と、指摘する。