猛烈な勢力の台風8号が、日本列島を襲おうとしている。気象庁は「過去最強クラス」と発表し、2014年7月7日18時20分、宮古島地方に暴風と波浪の「特別警報」が初めて出た。
台風8号は7日18時の時点で、中心気圧930hPa(ヘクトパスカル)。さらに勢力を強めつつあるとされ、1961年の「第2室戸台風」や、5000人以上の死者・行方不明者を出した59年の「伊勢湾台風」に匹敵するスケールといわれている。甚大な被害が出る恐れがあり、日本中で警戒されている。
気圧は「伊勢湾」「第2室戸」レベル
台風8号が発達を続けている。気象庁は7月7日、台風8号の今後の見通しを発表。「7月に日本列島に影響を与える台風としては過去最強クラス」だとして、最大級の警戒を求めた。台風は8日に沖縄地方へ最接近し、9日から10日にかけて西日本に接近すると予想されている。
気象庁予報(7日18時50分発表)によると、台風8号は8日18時、中心気圧915hPaで久米島の西約110キロを通過する。気象庁の統計史上、最も上陸時の中心気圧が低かった「第2室戸台風」の925hPaよりも低い気圧となり、このまま上陸すると記録は更新される。
気象庁は13年8月より「特別警報」の運用を始めた。これは「数十年に一度」の大雨や高潮などの被害が想定される場合に出されるもので、台風が原因の場合には「伊勢湾台風」が基準とされる。多くの地域では中心気圧930hPa以下、または最大風速50メートル毎秒以上で警報が出される。
ただし沖縄地方と奄美地方、小笠原諸島については中心気圧910hPa以下、または最大風速60メートル毎秒が基準となる。10日には熊本県南部へ上陸し、11日にかけて四国を横断。琵琶湖の南側を通過した後、北東へ進路を変え、12日に岩手県東部から海へ出る。
「第2室戸」では記録の針が振り切れた
それでは戦後最大級と言われた「第2室戸台風」とは、どんなものだったのだろうか。進路が1934年の「室戸台風」に似ていたことから名づけられ、室戸岬(高知県)上陸時には、最大風速が66.7メートル(10分間の平均)、最大瞬間風速84.5メートル毎秒以上を記録。死者・行方不明者202人、負傷者4972人、全半壊6万棟の被害を出した。
気象庁・室戸岬測候所職員だった川邉昭治さんは「月刊うちゅう」2013年8月号(大阪市立科学館)で、第2室戸台風の思い出を語っている。室戸岬測候所では最大瞬間風速84.5メートル「以上」となったが、当時の風速計の観測上限は60メートル毎時だったという。
風が次第に強まり、記録紙から記録ペンがはみ出そうになったため、川邉さんらは回路に「抵抗」を入れて振れ幅を調整。必死になって何とか測った数値が「84.5メートル以上」だった。その後、記録機は気象庁に送られて検査され、記録上限は90メートル毎時までに改良されたという。それほどまでに前代未聞の災害だったのだ。
当時の室戸岬気象台の職員宿舎の写真も掲載しているが、瓦が一部落ちている。小学生の時に徳島県でこの台風を経験したという60代の男性は、「屋根瓦が飛びまくっていた。あんなすごい風の台風は後にも先にもない」と、恐怖の経験を語る。
しかし「第2室戸」も「伊勢湾」も50年以上前の災害のため、当時を知る人は少なくなっている。特に伊勢湾台風はピンとこないようで、ツイッターでは、
「伊勢湾台風ってなに」
「伊勢湾台風知らないのは俺だけなのか…」
「勢力がすごいことを表す例えに、『伊勢湾台風』はもうわからない人だらけ。わかりやすい例えに換えて欲しい」
といった声が出ている。
なお7月7日の「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)では、台風8号が07年の「台風4号」と似ていると指摘している。上陸時の中心気圧945hPaは歴代10位の低さだが、「第2室戸」や「伊勢湾」は9月に発生しているため、7月に発生した台風としてはトップになる。