アルゼンチン「デフォルト」の余波 大豆国際価格が暴騰する可能性

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   アルゼンチンの国債が、約束通り返済できない「デフォルト(債務不履行)」に陥る気配が濃厚だ。

   2001年に一度デフォルトになり、貸し手(投資家)に返済額の大幅な減額(債権カット)を認めてもらって、なんとか財政再建に取り組んできたが、一部投資家への全額返済を命じる米国裁判所の決定が出て、資金繰りが再び息詰まる恐れが高まっているのだ。世界経済の新たな不安定要因になりかねないとの懸念も出ている。

2001年に財政破綻して借金を減額

アルゼンチンショックの再来か…
アルゼンチンショックの再来か…

   アルゼンチンは2001年に財政破綻して国債の返済ができなくなり、1000億ドル(約10兆円)の債務について返済免除などを要請。交渉の結果、9割超の投資家が借金の70%以上の減額(債権カット)に同意し、元本が減らされた新たな国債と交換、同国はその新しい国債の利払いを続けてきた。だが、投資家の一部は減額を拒否。そうした投資家から格安で債権を買い取ったヘッジファンドが全額返済を求めて米国で訴訟を起こしていた。6月16日、これについて米連邦最高裁がファンドに軍配を上げ、アルゼンチン政府は約13億ドル(約1300億円)を払わなければならなくなった。アルゼンチンは債権カットに応じた投資家への利払い分約5億ドルを米国の銀行に入金していたが、米国の裁判所はファンドへの返済をせずに利払いをすることを認めていないため、デフォルトの可能性があるのだ。

ここ数年、国民への大盤振る舞いが目立った

   デフォルトを回避するには米最高裁の判断に従ってファンドにお金を返済すればいいのだが、2001年に減額要請を拒否し、訴訟を起こしていない他の投資家も多く、彼らからも返済を求められると、返済総額は計150億ドルにも達するとされる。アルゼンチンの外貨準備は300億ドルを切っており、その半分以上が借金返済で吹き飛びかねないだけに、おいそれと支払いに応じるわけにはいかないところだ。

   債権カットに応じた投資家への利払いの期限は6月30日だったが、直ちにデフォルトになるわけではなく、30日間の猶予期間がある。アルゼンチン政府は減額を拒否するファンドなどと交渉し、7月末までに何とかデフォルトを回避する方策を模索するが、「見通しは全く立っていない」(国際金融筋)のが実情だ。

   このため、アルゼンチンショックの再来を連想した人も多いが、2001年のような緊張感はない。アルゼンチンは財政再建途上で、国際金融市場ではまだ半人前。海外で国債を発行できない状態が続いており、「影響が連鎖的に広がる可能性は低い」(国際金融筋)というのが大きな理由だ。

   ただ、やせても枯れても南米の大国の一角だけに、国際的に動揺が広がる恐れがないわけではない。特にここ数年、国内の政治的要請で自国産業を保護するための助成金、公共料金を抑えるための補助金など「国民への大盤振る舞いが目立った」(エコノミスト)。こうしたポピュリズム(大衆迎合)政治の下、財政赤字を補填するため中央銀行が無理に資金供給して外貨準備が減少、通貨ペソが急落し物価は上昇するという悪循環に陥り、今年はマイナス成長必至とみられるように、経済状況が悪化している。

大豆農家は「売り惜しみ」に走る

   これにデフォルトが加われば、アルゼンチン国内金融市場の混乱が、貿易など経済的結びつきの強いブラジルなど近隣諸国にも及び、新興国からの資金引き揚げを招くなど動揺が広がりかねない。特に、アルゼンチンが穀物輸出国であることが懸念材料だ。ロイター通信の報道(6月30日)によると、同国の大豆農家は既に、インフレに対応して大豆の売りを控えており、デフォルトが回避できなかった場合、さらに売り惜しみに走るとみられ、世界市場への大豆供給が減り、「中国を中心に需要が増加している中で、大豆および大豆ミールの国際価格の上昇圧力になる」と指摘。この点からも新興国の経済成長の足を引っぱる可能性があるという。

   こうした混乱が広がれば、結果として「安全な資産」として国際金融市場で円が買われ、「円高に振れる恐れがある」(エコノミスト)だけに、日本も「対岸(地球の裏側)の火事」と無関心ではいられない。

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