抜本的解決策にはほど遠い
一方、航空業界では2030年ごろにベテラン機長クラスが定年で大量退職する「2030年問題」が懸念されており、政府は今春から即戦力として自衛隊パイロットの民間航空会社への転職を再開した。対策案でも即戦力として外国人パイロットに焦点が当てられており、例えば、国内航空会社で機長になる場合に必要とされる1000時間の飛行経験の見直しなどを進め、国内で勤務しやすくするよう求めている。
ただ、こうした規制緩和の動きについて、業界からは「ベテランらの活用による対症療法であり、抜本的解決策にはほど遠い」との指摘もある。パイロットが一人前になるには10年以上かかるだけに、ベテランらの活用策とともに若いパイロットの育成は急務だ。
国交省もこうした問題点は把握しており、中長期的な対策として、航空大学校より学費が高い私立大のパイロット養成コース進学者を対象にした奨学金制度の創設も検討、育成に配慮した格好だ。ただし、「そもそも海外は国費育成が主流。高額な学費を負担してまでパイロットになりたい学生は多くはなく、日本も国費育成に力を入れるべきだ」(専門家)と国の関与を求める声が高まっている。