家庭用AV(音響・映像)の名門、パイオニアが、AV部門で香港の投資ファンドやオンキヨーと資本・業務提携することになった。家庭用AVは、ネット音楽配信の台頭などで苦戦している。AVの老舗2社が手を組み、コスト削減を図るとともに、投資ファンド主導で再建を図る。
パイオニア100%子会社で、家庭用AV機器の企画・製造・販売を行うパイオニアホームエレクトロニクスの株式の51%を、香港の投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア社に売却。残りの49%はオンキヨーと持ち合う。両社のブランドは維持しつつ、生産や部品の調達、販売面などで協力し、コスト削減を図る。両社の技術力を持ち寄って、新製品開発に生かすことも検討課題となる。
家庭用AV事業を連結対象から外す
パイオニアは1938年に東京で設立された福音商会電機製作所が前身。前年に創業者の松本望氏が、国内初のHi-Fiダイナミックスピーカーの開発に成功し、スピーカーの製作を始めた。1962年、世界初のセパレートステレオを発売。1970~80年代のオーディオ・ブームに乗って市場で存在感を高めた。レザーディスク(LD)プレーヤーやプラズマディスプレイなど、革新的な製品も発売し、市場を開拓してきた。
ただ現在のパイオニアの事業構造をみると、主力はカーナビやカーオーディオなどカーエレクトロニクス部門。2014年3月期の連結売上高4981億円のうち、車部門が7割を占め、営業利益も124億円を稼ぐ。一方、家庭用AVなどホームエレクトロニクス部門は売上高全体の2割で、営業利益に至っては僅か1億円に過ぎない。今回再編の対象に含まれていないDJ機器が、ホームエレ部門を下支えしているのが現状だ。家庭用AV事業を連結対象から外し、本体の収益改善を図る。
ネット配信という大きな流れには逆らえなかった
一方のオンキヨーは1946年設立された大阪電気音響が起源。こちらもスピーカーが中心だったが、アンプやCDプレーヤーなども自社開発し、総合AVメーカーに発展した。DVDが登場した際には、いち早くホームシアターを世界展開した。2007年にはパソコンメーカー、ソーテックを子会社化するなど、パソコン事業にも本格参入した。2014年3月期の連結売上高は360億円で、営業利益は2億9000万円。純損失は4億6000万円と、事業環境は厳しい。
両社とも、根強いファンを抱えるが、音楽や映像のネット配信の普及という大きな流れには逆らえなかった。DVDなど光ディスクを搭載した機器は需要が急減。良い製品の代名詞だった重くて大きな機器は敬遠され、軽さ、小ささが重視されている。
AV業界では、2008年、日本ビクターとケンウッドという名門2社が経営統合し、JVCケンウッドとして再建を進めている。海外では、ギターで知られる米ギブソン・ブランズが、オランダの電機大手、フィリップスの音響機器事業を買収すると発表している。ギブソン社は、オンキヨーに出資しているほか、ティアックの親会社でもある。
世界では、規模が小さなAVメーカーがなお多く、今後、世界を舞台にした業界再編が進む可能性もある。