高城亜樹なりすまし、本人が被害届出せない不思議 警察見解は「被害者はツイッター社」

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   AKB48の高城亜樹さんが、ツイッターでなりすましの被害にあったという。自身のアカウントから、身に覚えのない書き込みが投稿されていたというのだ。

   所属事務所は警察と相談。ところが、アカウントを乗っ取られた張本人である高城さんは被害届を出せないことが分かったという。なぜなのか。

「犯人」は、「パスワードを知る取引先の社員」

セキュリティー意識の向上がなりすましから身を守る
セキュリティー意識の向上がなりすましから身を守る

   高城さんのツイッターから2014年6月18日、プロ野球選手と会食したとの内容が発信された。ところが高城さん本人が、自分のツイートではないと発言。何者かがアカウントを乗っ取ったのではないかと、所属事務所が調査に乗り出していた。7月3日、ワタナベエンターテインメントの大澤剛取締役が高城さんの公式ブログ上で調査の経緯を報告。なりすましの「犯人」は、「ツイッターのパスワードを知る取引先の社員」だと判明した。取引先の謝罪を受け入れ、和解したとも説明した。

   半面、事務所側は被害届の提出を検討していたが、警視庁サイバー犯罪対策課と原宿署から、「被害を受けた」のはツイッター社であるため高城さんは被害届を出せないと指摘されたそうだ。ツイッター社も提出を見送ったため、これで「決着」してしまった。ウソの投稿をばらまかれて直接迷惑を受けた高城さんが「被害者」と認定されないのは、どうも釈然としない。

   交流サイト(SNS)だけでなく、インターネットの各種サービスを利用する際のパスワード入力は日常茶飯事だ。それだけに類似のトラブルはしばしば起きている。独立行政法人・情報処理推進機構の「よくある相談と回答」のひとつに、こんな質問があった。「オンラインゲームでアカウントを乗っ取られてアイテムを盗まれた。ゲーム会社に文句を言ったら『警察に通報しろ』と言われた。犯人を捕まえて欲しい」。この対応として、オンラインゲーム会社と質問者の間で問題が解決しない時は、警察へ相談するよう促している。ただし、こう付け加えられていた。

「なお、あなたはゲーム会社に対する『利用権者』という立場で、本件においては『参考人』となります。アイテムの復旧等とは別に、被害届はゲーム会社から、ゲーム会社の判断で提出が行われます」

   要するに、不正なアクセスを受けたのはサービスを提供するゲーム会社で、だから被害届を提出できるのもゲーム会社だという。

現状では「自分で自分の身を守る」しかない

   大分県警察本部のサイトにも、同様の記述がある。「他人のID、パスワードを勝手に不正利用することは、不正アクセス禁止法違反に該当します」と明示し、不正アクセスされた可能性がある場合は最寄りの警察署に相談するよう呼びかけている。しかし続きを読むと、

「不正アクセス禁止法違反では、被害者は、不正アクセスされたサーバの管理者となりますので、IDの利用者が被害届を提出することは出来ません」

となっている。あくまでも、不正アクセスを受けたのはサービスを提供する業者という立場だ。こうなると個々のユーザーは、業者に願い出るしかない。

   こうした見解に対して、実害を受けた人のやりきれない思いがネット上には書かれていた。ある男性が、職場の同僚からフェイスブックのメッセンジャー経由でオークションサイトのアクセスに必要な認証番号を問われた。同僚に気を許してうっかり教えてしまったが、実は相手はフェイスブックアカウントの乗っ取り犯。認証番号は悪用され、その後オークションサイトに不正なページが立ち上げられていた。男性は警視庁サイバー犯罪対策課の相談窓口に電話したが、被害者はフェイスブックで、乗っ取られた男性ではないと言われたそうだ。男性もオークションサイトの認証番号を不正に使われたと主張したが、これも被害者は男性ではなく、オークションサイト側だと説明されたという。

   ITジャーナリストの井上トシユキ氏に聞くと、ユーザーがSNSでアカウントが乗っ取られた場合、運営会社に連絡して悪用を続けられないように凍結してもらうことで解決を図る場合が多く、「被害届の提出にまで話が発展するケースはあまり聞きません」と話す。高城さんの場合、なりすましによるツイートがファンに誤解を与えて自身のイメージやタレント活動に悪影響を及ぼしかねず、事務所としては看過できずに警察へ相談を持ちかけたとみる。

   最近では、無料通話・メッセージアプリ「LINE」でも、自分のアカウントが第三者に乗っ取られて不正に使われているとの報告が増えていると、LINE公式ブログが6月27日に発表した。警視庁によると、不正アクセス禁止法では、システムの管理者に不正アクセス行為の防御措置を講じる責務を課している。井上氏は、「SNSの事業者は、利用者保護のために例えば一定時間だけ有効な『ワンタイムパスワード』を発行するなど便宜を図ってほしい」と要望するが、現状では個々のユーザーが自衛するしか乗っ取りを防ぐ手段がないとも指摘する。ごく当たり前の措置ではあるが、定期的なパスワードの変更や、同じパスワードを複数のサービスに使わないなど、自分で自分の身を守る心構えが何よりも大切だ。

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