現状では「自分で自分の身を守る」しかない
大分県警察本部のサイトにも、同様の記述がある。「他人のID、パスワードを勝手に不正利用することは、不正アクセス禁止法違反に該当します」と明示し、不正アクセスされた可能性がある場合は最寄りの警察署に相談するよう呼びかけている。しかし続きを読むと、
「不正アクセス禁止法違反では、被害者は、不正アクセスされたサーバの管理者となりますので、IDの利用者が被害届を提出することは出来ません」
となっている。あくまでも、不正アクセスを受けたのはサービスを提供する業者という立場だ。こうなると個々のユーザーは、業者に願い出るしかない。
こうした見解に対して、実害を受けた人のやりきれない思いがネット上には書かれていた。ある男性が、職場の同僚からフェイスブックのメッセンジャー経由でオークションサイトのアクセスに必要な認証番号を問われた。同僚に気を許してうっかり教えてしまったが、実は相手はフェイスブックアカウントの乗っ取り犯。認証番号は悪用され、その後オークションサイトに不正なページが立ち上げられていた。男性は警視庁サイバー犯罪対策課の相談窓口に電話したが、被害者はフェイスブックで、乗っ取られた男性ではないと言われたそうだ。男性もオークションサイトの認証番号を不正に使われたと主張したが、これも被害者は男性ではなく、オークションサイト側だと説明されたという。
ITジャーナリストの井上トシユキ氏に聞くと、ユーザーがSNSでアカウントが乗っ取られた場合、運営会社に連絡して悪用を続けられないように凍結してもらうことで解決を図る場合が多く、「被害届の提出にまで話が発展するケースはあまり聞きません」と話す。高城さんの場合、なりすましによるツイートがファンに誤解を与えて自身のイメージやタレント活動に悪影響を及ぼしかねず、事務所としては看過できずに警察へ相談を持ちかけたとみる。
最近では、無料通話・メッセージアプリ「LINE」でも、自分のアカウントが第三者に乗っ取られて不正に使われているとの報告が増えていると、LINE公式ブログが6月27日に発表した。警視庁によると、不正アクセス禁止法では、システムの管理者に不正アクセス行為の防御措置を講じる責務を課している。井上氏は、「SNSの事業者は、利用者保護のために例えば一定時間だけ有効な『ワンタイムパスワード』を発行するなど便宜を図ってほしい」と要望するが、現状では個々のユーザーが自衛するしか乗っ取りを防ぐ手段がないとも指摘する。ごく当たり前の措置ではあるが、定期的なパスワードの変更や、同じパスワードを複数のサービスに使わないなど、自分で自分の身を守る心構えが何よりも大切だ。