8つもある想定事例から批判浴びた事例をピックアップ
このような状況にもかかわらず、7月1日の会見では再び母親と赤ちゃんのイラスト入りの米艦防護に関するパネルが登場した。政府は、今回の憲法解釈変更で対応可能になる事例を8つも挙げている。わざわざ、その中から批判を浴びている事例をピックアップしたことになる。
5月15日の会見時点で、パネルは安倍首相の強い意向で製作されたことが指摘されており、7月1日の会見でも同様の意向が働いた可能性が高い。安倍首相は、
「米国が(日本人を)救助、輸送しているとき、日本近海において、攻撃を受けるかもしれない。我が国自身への攻撃ではない。しかしそれでも、日本人の命を守るため自衛隊が米国の船を守る。それをできるようにするのが今回の閣議決定」
などと従来の説明を繰り返したが、一連の指摘に反論することはなかった。
当然、野党はこの点を攻撃材料にしたい考えで、共産党の志位和夫委員長は首相会見の2時間後にツイッターに
「首相が会見で、集団的自衛権行使容認のため、またも『邦人輸送の米艦護衛』の例を持ち出したのは、率直にいって呆れた。過去の日米交渉で米側はこの場合の日本人救出を断っており、『自国の責任』となっていたではないか。こんな例しか持ち出せないとは、自分の空理空論ぶりを、自分で証明するものだ」
と書き込んだ。
菅義偉官房長官は、7月1日午前の会見で、
「長官がおっしゃる国際化の進展や中国・北朝鮮を含めて周辺の環境が変わるというのは重々わかるが、長官ご自身は、集団的自衛権の必要性をいつごろからお考えなのか」
と聞かれ、
「政府を代表して私は会見をしているので、私個人のことは控えたいと思う。ただ、国民の皆さんの生命、財産を守ることを考えたときに、私は今回の政府の提案は、ある意味では当然のことだと思う」
と歯切れの悪い答え。安倍首相の独断専行ぶりが際立つ形になっている。