政府は2014年7月1日夕方臨時閣議を開き、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を閣議決定した。直後に安倍晋三首相は首相官邸で会見し、閣議決定の正当性を強調した。だが、官邸のすぐ外では大規模なデモが繰り広げられ、国論は二分されたままで閣議決定に踏み切った形だ。
実は「国論」を調べるための世論調査の結果も二分されており、ここ数日、官邸の会見場では世論調査のあり方をめぐる攻防が繰り広げられていた。
朝日調査では「賛成28%、反対56%」、産経は「集団的自衛権 63%が容認」
集団的自衛権をめぐる世論調査は、調査を行うメディアの「社論」によって結果が大きく異なっているようだ。例えば行使容認に批判的な朝日新聞が6月21日と22日に行った電話世論調査では、集団的自衛権について
「集団的自衛権とは、アメリカなど日本と密接な関係にある国が攻撃された時に、日本が攻撃されていなくても、日本への攻撃とみなして一緒に戦う権利のことです。これまで政府は憲法上、集団的自衛権を使うことはできないと解釈してきました。集団的自衛権を使えるようにすることに、賛成ですか。反対ですか」
と聞いている。その結果、賛成28%、反対56%だった。いわゆる解釈改憲をめぐっては、
「安倍首相は、国会の議論や国民の賛成を経て、憲法を改正するのではなく、内閣の判断で、政府の憲法の解釈を変えて、集団的自衛権を使えるようにしようとしています。こうした安倍首相の進め方は適切だと思いますか。適切ではないと思いますか」
と聞いた。その結果「適切だ」という回答が17%で、「適切ではない」が67%だった。
こう見ると、世論は圧倒的に「容認反対」に見える。たが、行使容認に積極的な産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が6月28日と29日に行った世論調査では、対照的な結果が出ている。
この世論調査では、
「同盟国の米国など日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、日本への攻撃とみなして一緒に反撃する『集団的自衛権』について」
という問いに対して4つの選択肢から選ぶ方式。選択肢と回答は以下のとおりだった。
「全面的に使えるようにすべきだ」(11.1%)
「必要最小限度で使えるようにすべきだ」(52.6%)
「使えるようにすべきではない」(33.3%)
「他」(3.0%)
解釈改憲については、
「前問で『使えるようにすべきだ』と回答した人に質問する。集団的自衛権を使えるようにする方法は」
という問いに続いて、やはり4つの選択肢を提示した。その結果は以下のとおりだ。
「必ずしも憲法改正の必要はなく、憲法解釈を変更すればよい」(22.8%)
「憲法改正が望ましいが、当面、憲法解釈の変更で対応すればよい」(48.0%)
「憲法解釈の変更は認められず、必ず憲法の改正が必要だ」(25.4%)
「他」(3.8%)
「必要最小限度」という選択肢の有無で、調査によって賛否の割合が大きく違って見える仕組みになっているとみられる。