将来ビジョンをまとめ官民でイノベーション
自動車の通信技術は1990年代にGPS式カーナビが誕生し、2000年以降は個々の自動車の位置・速度情報を集約してリアルタイムの渋滞情報などをドライバーにカーナビを通じて知らせる「テレマティクスサービス」が普及した。東日本大震災では、自動車メーカー各社のテレマティクスサービスで収集したクルマの位置・速度情報を集積し、被災地付近の道路交通マップを公開し、被災地の支援活動に役立てる取り組みも行われた。
日本はハイブリッドカーや電気自動車だけでなく、車外通信技術を用いたビッグデータ活用の分野でも、世界をリードしてきた。「先進的な技術で国際競争力を有する自動車関連産業は、日本を象徴するリーディング産業の一つ。ITの一層の活用でイノベーションを進めることは、日本経済や社会全体に大きな波及効果をもたらす」と国交省は見ている。
しかし、新たなサービスの創出や技術革新には課題もある。「取得した情報の取り扱いについて、個人情報保護制度との関係で、どの範囲の情報を活用するのが適当なのか、明確になっていない」「同じ業界でも、メーカーによって個別のシステムが開発・運用されており、情報の仕様などが共通化、統一化していない」(国交省関係者)という。
このため国交省は「自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン」をまとめ、自動運転技術の開発や自動車から得られるビッグデータの活用で、日本発のイノベーションを官民で目指すことになった。開発の目標は、東京オリンピックが開かれる2020年という。果たして、自動車とビッグデータを組み合わせ、どんな技術革新が生まれるのか、今から楽しみだ。