大槌町は郷土芸能が盛んな土地柄です。大槌町郷土芸能保存団体連合会には、鹿子踊(ししおどり)、神楽、虎舞などを舞う18の保存団体が加わっています。同じような郷土芸能が地域ごとに並存しているのが特徴で、例えば、鹿子踊の場合、臼澤鹿子踊、金澤鹿子踊、上亰(かみよ)鹿子踊、吉里吉里(きりきり)鹿子踊、徳並鹿子踊の5団体が連合会に加盟しています。
郷土芸能の各団体は、1992(平成4)年に連合会が結成されるまでは、互いに張り合い、ぶつかり合うこともあったそうです。きっと、競い合い、切磋琢磨(せっさたくま)することが、郷土芸能継承への源泉になったのでしょう。しかし、震災後、こんな雰囲気に、変化が出てきました。
2014年4月27日、臼澤鹿子踊保存会が中心になって呼びかけたドロノキの植樹祭が大槌町の新山高原でありました。植樹祭には町内の他の鹿子踊保存会も参加し、植樹を祝って合同で群舞しました。合同での植樹も、群舞も、400年に及ぶ鹿子踊の歴史上、初めてのことでした。
鹿子踊では、ドロノキを、鹿子頭のたてがみ「カンナガラ」の材料に使っています。ドロノキはヤナギ科の落葉高木。節が少なく、まっすぐに成長するため、カンナで薄く削って約2メートルのたてがみを作ります。毎年、交換が必要で、成木の入手が困難になり、ナイロンのテープで代用した時もありました。
植樹した苗は、20年ほど前からドロノキの植樹をしている長野県上田市の信濃国分寺から助言をもらい、大槌自生のドロノキの種から育てました。植樹祭に参加した約200人の関係者が200本の苗を植樹しました。伐採できる直径50センチほどの大きさになるまでには、40年から50年ほどかかります。
参加した臼澤鹿子踊保存会の佐々木楓(かえで)さんは「合同での舞は難しいと思ったが、実際にやってみたら楽しかった。他の団体と交流するいい機会になりました。植樹したドロノキが育てば、各団体と分け合うことができます」と話しました。臼澤鹿子踊保存会会長の東梅英夫(てるお)さんは「これからも毎年、広く皆さんの力をお借りして植樹を続け3500本を目標に育てたい」と抱負を述べています。
(大槌町総合政策課・但木汎)
連載【岩手・大槌町から】
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