カイゼンのカギは蓄電装置
トヨタの今季のマシンは「TS040」。今季のレース規則改正を受け、前輪用と後輪用のモーターを搭載する4輪駆動車とした。今季レースは燃費性能の20~30%の向上も求められているが、これはトヨタの得意分野でもあり、燃焼効率の良いエンジンを据え付けた。燃費向上を実現したうえでパワーアップも図り、HVシステムの最大出力は1000馬力に達した。
カイゼンのカギは蓄電装置。従来の電池ではなく短時間での大量の充放電に適した「キャパシタ」と呼ばれる部材を活用した。これにより、急減速と急加速を繰り返すレースで発生する摩擦エネルギーを、ロスなく電気として生かすことができるようになったという。
実際、今季のトヨタ車は好調で、英国、ベルギーで開かれた2戦を連勝。「本番」のルマンの予選でも、参戦2台のうち中嶋一貴(父は元F1ドライバーの中嶋悟氏)らが運転したマシンはトップで「ポールポジション」を獲得した。
しかし、本番には魔物が潜んでいた。中嶋らの「7号車」はスタートから約14時間にわたってほぼ首位を維持していたが、突然、電気系統のトラブルが発生し結局は無念のリタイア。中嶋は「これがルマンであり、挑戦しがいがある。また挑戦する」と述べた。
もう1台はスタート90分後の豪雨による多重クラッシュに巻き込まれ、50分ものピット作業を強いられたが驚異的な巻き返しで3位に食い込んだ。チーム代表の木下美明氏は「この経験を糧に我々はより強くなって帰ってくる」と語った。アウディの強固な壁を崩せるか。来年に向け、トヨタの再挑戦は既に始まっている。