中国、日本国債大量売りの意図 3割減は「有事」への準備なのか

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   中国が日本国債の保有を減らしている。

   中国は、リーマン・ショック後の世界的な景気低迷や欧州の債務危機に伴う「超円高」のときに日本国債の残高を増やし、海外で最も多く日本国債を保有する国になった。ところが、2013年12月末にはおよそ14兆3000億円と、前年に比べて3割も減らしていた。

「売り」に転じた要因の一つは円安?

中国が日本国債を売っている?(画像は財務省のホームページ)
中国が日本国債を売っている?(画像は財務省のホームページ)

   財務省の国際収支統計によると、中国が保有する日本国債(地方債や社債などを含む)は2013年12月末で、14兆3000億円。2006年以降でピークだった12年末と比べると6兆2000億円(30.2%)も減った。

   ただ、国際収支統計の数字は日本国債の実際の保有者ではなく、国債を保護預かりする金融機関の所在地ベースの残高のため、「投資家が他国(の金融機関)を介して売買した場合はわかりません」。かつ、統計上は地方債などの債券を含んでいるので、日本国債だけとなると、財務省は「実態は把握できていない」としている。

   なかなか実態をつかむのはむずかしいようだが、中国が日本国債を減らしたことは間違いないようで、中国が日本国債を「売り」に転じた要因の一つとみられるのが、12年秋からの円安だ。

   2011年3月には一時1ドル76円25銭まで円高が進行したが、自民党の安倍晋三総裁が日銀による「異次元の金融緩和」を唱えて以降、円は対ドルで一気に90円台を突破して13年末には一時105円台まで下落した。

   中国経済に詳しい、第一生命経済研究所経済調査部の主任エコノミスト、西濱徹氏は「円安になれば日本国債の価値は下がります。人民元相場はドルとほぼ連動していますから、(中国が)国富をみすみす減らすようなことはしないと考えれば、(日本国債を)売ってもおかしくはありません」と話す。

   とはいえ、日本国債「売り」の要因が円安だとしたら、米国や英国、フランスなども同様の動きがあってもよさそうなもの。しかし、英国は保有をやや減らしたものの、米国やフランスはほとんど変わりがない。中国に売らなければならない、別の理由があるのだろうか――。

   日本経済新聞(2014年6月21日付)は、「中国、日本国債減らしの怪」の見出しで、中国が日本国債を売る理由の一つは、尖閣諸島や歴史認識をめぐる問題があるとみている。日中両国が激しく対立しているのに、「虎の子の外貨準備で日本の借金を穴埋めするなんてとんでもない、といった批判が起こるのを恐れている」と指摘。「日本と軍事的にぶつかった場合に備えているとの説もある」とも報じている。

日本国債を売った資金の「ゆくえ」は…

   たしかに、軍事的衝突があれば、日本政府は中国の資産を差し押さえるかもしれないので、中国が日本国債を減らしても不思議はない。

   しかし、国際金融アナリストの小田切尚登氏は「政治的な思惑で国債を売買することは、あまり考えられない」という。

   中国が日本国債を大量に売却し続ければ、日本国債の値下がりを誘い、長期金利は急激な上昇を招きかねない。そうなると日本経済が大混乱に陥るが、「日本経済の混乱は中国にも跳ね返りますから、中国がトクすることは何もありません」と説明する。

   加えて、「どんなに米国や日本が嫌いといっても、多くの金額を安定して運用できる投資先は米国債や日本国債くらいしかありません」。そもそも、国債は中長期投資が前提だ。いま売れば、損を確定してしまうばかりか、売った資金をどこで運用するのか。「中国は(金額が大きいので)運用先に困るはず」とも話す。

   そうなると、考えられる売却理由は「単純に日本国債の先行きに不安を持っているから」ということになりそうだ。日本の財政不安から、長期金利が上昇して国債価格が暴落する可能性が高まっていると判断すれば、今のうちに少しずつでも減らしてリスクを分散しておこうという動きは理解できる。

   もう一つは、中国国内への資金供給だ。小田切氏は、「全体の資金運用がよくわからないので、あくまでも可能性として考えられること」と前置きしながらも、「海外に振り向けていた資金を国内に振り向けることで、景気浮揚につなげていくことは考えられます」と推察する。

   中国は不動産市況の悪化に苦しんでいる。それが金融市場に飛び火すれば、経済不安が一気に広がるおそれがある。

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