日本国債を売った資金の「ゆくえ」は…
たしかに、軍事的衝突があれば、日本政府は中国の資産を差し押さえるかもしれないので、中国が日本国債を減らしても不思議はない。
しかし、国際金融アナリストの小田切尚登氏は「政治的な思惑で国債を売買することは、あまり考えられない」という。
中国が日本国債を大量に売却し続ければ、日本国債の値下がりを誘い、長期金利は急激な上昇を招きかねない。そうなると日本経済が大混乱に陥るが、「日本経済の混乱は中国にも跳ね返りますから、中国がトクすることは何もありません」と説明する。
加えて、「どんなに米国や日本が嫌いといっても、多くの金額を安定して運用できる投資先は米国債や日本国債くらいしかありません」。そもそも、国債は中長期投資が前提だ。いま売れば、損を確定してしまうばかりか、売った資金をどこで運用するのか。「中国は(金額が大きいので)運用先に困るはず」とも話す。
そうなると、考えられる売却理由は「単純に日本国債の先行きに不安を持っているから」ということになりそうだ。日本の財政不安から、長期金利が上昇して国債価格が暴落する可能性が高まっていると判断すれば、今のうちに少しずつでも減らしてリスクを分散しておこうという動きは理解できる。
もう一つは、中国国内への資金供給だ。小田切氏は、「全体の資金運用がよくわからないので、あくまでも可能性として考えられること」と前置きしながらも、「海外に振り向けていた資金を国内に振り向けることで、景気浮揚につなげていくことは考えられます」と推察する。
中国は不動産市況の悪化に苦しんでいる。それが金融市場に飛び火すれば、経済不安が一気に広がるおそれがある。