セウォル号事故の責任をとって一度は辞意を表明していた韓国のチョン・ホンウォン首相が、一転して続投することになった。当初は2014年6月中にも辞表が受理されるとみられていたが、後任探しが難航。朴槿恵(パク・クネ)大統領は苦肉の策を選ばざるを得なくなった。
難航の大きな理由が、後任として取りざたされていた人物の過去の発言だ。韓国の政治家にとって、日本の植民地支配を肯定的に語ることはタブーだ。発言は結果として見事に「地雷」を踏んだことになり、指名辞退に追い込まれた。
指名の翌日に過去の発言が問題化
チョン首相は4月27日に緊急会見を開いて辞意を表明し、青瓦台(大統領府)の報道官も同日の会見で、事故への対応が一段落した時点で辞表を受理するという朴槿恵(パク・クネ)大統領の方針を明らかにしていた。
当初、後任として指名されたのは元大法院(最高裁)判事の安大熙(アン・デヒ)氏だった。だが、直後に裁判官退任後に弁護士として不透明な多額の報酬を受け取っていたことが問題視され、14年5月には指名を辞退していた。
次に白羽の矢が立ったのが元中央日報主筆の文昌克(ムン・チャングク)氏。青瓦台は6月10日の会見で、指名の理由として文氏の「優れた洞察力と推進力」を挙げた。だが、翌6月11日に問題が噴出した。自らが長老を務めるソウル市内の教会で2011年に行った講演の動画が発掘され、その内容が問題視されたのだ。
講演では、
「『神様は、なぜこの国を日本の植民地にしたのか』と内心では抗議しているかもしれないが、神様の意思があるはず」
として、神の意思を、
「お前たちは李朝500年という無駄な歳月を送った民族だ。君たちには試練が必要だ」
などと推測した。