惨敗、自信喪失、監督辞任…2014年サッカーワールドカップ(W杯)の日本代表は地球の裏側で地獄を見た。
ザッケローニ監督に責任を負わせたものの、協会関係者は次回に向けて多くの宿題に悩んでいる。
岡田武史氏「外国のチームは必死で戦っていた」
1分け2敗。これが日本の成績である。ザックジャパンとしてスタートしてから4年間の成果は惨憺たるものに終わった。
「責任をとる。日本代表から離れなければならない」
コロンビアに敗れた翌2014年6月25日、ザッケローニ監督は記者会見で辞任を表明した。初戦のコートジボワールに1-2敗れ、続くギリシャとは0-0の引き分け、生き残りを賭けたコロンビア戦は1-4。1勝もできない惨敗だった。
「初戦でつまずいたのが誤算だった」
そのコートジボワール戦は前半に1点を先制しながら逆転負け。本大会に入る前の練習試合はすべて勝った。内容はいずれも逆転勝ちだったが、ザッケローニ監督のコメントで印象に残る言葉があった。
「先制点を取ることが大事だ。W杯では先に点を取られると苦しい」
初戦はその狙い通り先制。有利に試合を進める絶対条件を得ながら、後半にひっくり返された。練習試合と本番の違いなのだろう。
この試合の後、評論家と称する専門家たちから監督の戦術に疑問の声が出始め、ギリシャ戦で引き分けると、その声はボルテージが上がった。
言わせてもらえば、勝てなかった日本が弱かっただけのことである。前日本代表監督だった岡田武史氏はこう言った。
「外国のチームは必死で戦っていた。そのプレーに感動した。そういうところを学ぶ必要がある」
選手が負けたんだよ、と言外に示しているのである。
評論家諸氏は正しい情報を伝えなかった
今回の日本代表の実力は成績通りなのだろう。ただ、周囲のあおり方が尋常ではなかった。とりわけマスメディアの「過大すぎる期待報道」は度を超えていた。多くのサッカーOBがテレビなどで「強い」「勝てる」と連呼しまくった。
日本代表の力を伝えることはほとんどなかった。そういう専門家の見方はファンにさらなる多大な期待感を与える。つまり評論家諸氏は、正しい情報を伝えなかったことになる。専門家とファンの区別がつけられない評論家ばかりだったということなのだろう。
先の冬季五輪でも同じ状況だった。試合に臨む前から「金メダルだ」を騒ぐ。女子フィギュアスケートで浅田真央が6位に終わったことなどなかったような伝え方をしている。世界大会は、勝負するところである、ということが抜けているのはいかがなものか。
日本はグループリーグでは、1998年フランスで3戦全敗、2002年日韓大会は2勝1分け、06年ドイツ大会は1分け2敗、10年南アフリカ大会は2勝1敗。そして今回のブラジル大会となる。1大会ごとに結果が上下している。安定した成績が保てないのだ。やってみなければ分からない、ということになる。
サッカーのW杯はチーム編成が難しい。4年に1度の大会だけにメンバーを最初から固定できない。そのうえ海外でプレーする選手が時によって加わる。どの競技でも日本の選手は子供の頃から全員そろって練習、合宿することが習慣になっている。
「全員そろっての練習時間が少なかった」
ザッケローニ監督の口から漏れた一言は、次の大会に臨む日本のヒントになるはずだ。聞くところによると、ザッケローニ監督は自分の考えた戦法、戦術を教えきることができなかったという。おそらく全員練習のことだろう。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)