優先席付近でも「混雑時」以外はメールOK 関西で7月から順次解禁、首都圏は検討すらせず

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   「優先席付近では携帯電話電源OFF」。関西では、このルールが約10年ぶりに改められることになった。車内での通話は引き続きご法度だが、混雑しているとき以外は、優先席付近でもメールなどが使えるようになる。

   第2世代携帯電話(2G)よりも第3世代携帯電話(3G)の方がペースメーカーや除細動器などの医療機器に影響を与えにくいとされる。2Gのサービス終了を踏まえて総務省が指針を見直し、ルールも見直されることになった。ただ、関西の鉄道会社の中にも慎重論があったといい、結論が出るまでに1年以上かかっている。首都圏は話し合いすら始まっておらず、ルール見直しは相当先のことになりそうだ。

「お客様の体同士が触れ合う程度」が「混雑時」の目安

関西一円では優先席でも「混雑時」以外はメールが解禁される
関西一円では優先席でも「混雑時」以外はメールが解禁される

   関西では03年頃から鉄道会社ごとに独自にルールを定めていたが、04年2月から関西一円で「優先座席付近では携帯電話の電源をお切りください」と統一して運用している。首都圏でも03年9月から同様の統一ルールが運用されている。

   このルールが、関西では14年7月以降「優先座席付近では、混雑時には携帯電話の電源をお切りください」と順次改められることになった。JR西日本と、関西私鉄の業界団体の関西鉄道協会が14年6月25日発表した。「混雑時」以外は、通話以外の携帯電話使用が解禁されることになる。「阪急名物」として知られていた「携帯電話電源オフ車両」も廃止される。

   各社共通のポスターでは「お客様の体同士が触れ合う程度」を「混雑」の一応の目安にしている。車両によって混雑の度合いは異なるため、車掌が一律に「混雑しているので優先席付近では電源を切ってほしい」といったアナウンスはせずに、基本的には乗客の判断に任せる方向だ。

指針ではペースメーカーと15センチ以上離すことを求める

   ルール変更の根拠になったのが、13年1月に総務省が改定した「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」。改定では、12年7月に第2世代携帯電話(2G)のサービス終了後の状況を反映している。それによると、

「一部の植込み型医療機器について、携帯電話から最長で3cm程度の離隔距離で影響を受けることがあった」

として、ペースメーカーと携帯電話端末の距離が15センチ以下にならないように求めており、15センチが保てないおそれがある場合には、

「事前に携帯電話端末が電波を発射しない状態に切り替えるなどの対処をすることが望ましい」

としている。改定前の指針では、22センチ距離を置くようにもとめていた。総務省の調べでは、LTE方式の端末についてもペースメーカーへの動作への影響は確認されず、13年12月にLTEについても同指針を適用することを発表している。

関西では合意形成に1年以上かかり、首都圏では協議すら始まってない

   改定の背景には、ガラ空きの優先席でメールを打っていた乗客がルールを理由に注意されてトラブルに発展する事例があり、ルールの合理性に疑問符がついていたことがある。関西の鉄道会社では13年1月の指針改定からほどなくしてルール見直しに関する議論を始めたが、ペースメーカーへの影響を懸念して慎重論を唱える社もあった。影響調査や合意形成に時間がかかり、改定から1年半後のルール見直しになった。

   だが、首都圏で同様にルールが見直されるのは、かなり先のことになりそうだ。JR東日本によると、鉄道会社間で協議すら行われていない。JR東日本としても、現時点では現行のルールを維持する構えだ。仮にルール見直しに向けた動きが起こったとしても、各社が協議する場を新たに立ち上げるところから始めなければならず、紆余曲折が予想される。

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