日本にとっては消化不良気味の試合が続くワールドカップで、日本代表メンバーが頻繁に口にするのが「自分たちのサッカー」という言葉だ。
どの試合の前後でもこの言葉が繰り返され、一部では「自己啓発のよう」という声や、識者からは「『自分たちのサッカー』と言ったって、全然通用していないじゃないか」といった厳しい声もあがっている。
長友選手「どれだけ自分たちのサッカーをしても、やっぱり試合には勝てない」
日本代表は1次グループリーグ戦では苦戦を続けている。2014年6月15日のコートジボワール戦では、序盤に本田圭佑選手が1点を入れたものの、後半に2点を許し逆転負けを喫した。6月20日のギリシャ戦では、ギリシャから退場者が出ただけに日本は人数で勝っていたはずだが、最後までゴールを決められず引き分けに終わった。6月24日のコロンビア戦で勝つことがリーグを抜けるための絶対条件だ。
いずれの試合でも、メンバーは「自分たちのサッカー」という言葉を口にしている。 例えばコートジボワール戦直後には、
「自分たちのサッカーを、ここのピッチで表現できなくて負けてしまった」(長谷部誠選手)
「先制はしたけれど、前後半通して、自分たちらしさが出せなかったのですごく悔しい」(香川真司選手)
といった反省の弁が相次いだ。
ギリシャ戦では、直前に岡崎慎司選手が
「やっぱり自分たちのサッカーを貫き通して、前から仕掛けていって、自分たちのサッカーを見せるということが一番やらなきゃいけないことだと思います」
と意気込み、引き分けると長友佑都選手が
「結局、決定機をあれだけ決められなければやっぱり試合には勝てなくて、どれだけいいサッカーをしても、どれだけ自分たちのサッカーをしても、やっぱり試合には勝てない」
と悔やんだ。コロンビア戦に向けた抱負でも、長友選手は「自分たちのサッカー」という言葉を口にした。
「悔いが残るままワールドカップを終えてしまうので、次のコロンビア戦、自分たちのサッカーを本当にもっともっとしたい」
セルジオ越後氏「これが世界における我々の本来の力」
コロンビア戦を控えた6月23日朝(日本時間)の時点でも、
「自分たちのサッカーを、この2試合見せられなかったわけで、3試合目は、しっかりそこをピッチの上で出したいと思っている」(長谷部選手)
「やはり自分たちのサッカーで、前からボールを奪いにいって、奪った後もボールボゼッション(ボールを持ったままにすること)をしっかりする、そういうサッカーができるかが非常に大事」(本田圭佑)
といった具合で、やはりこの言葉が頻出している。
日本が得意なのは、敵陣内でパスを回しながらチャンスを待ち、一気に攻める攻撃的スタイルだとされる。日本代表も、このスタイルを「自分たちのサッカー」だと考えているとみられる。
だが、現状は「掛け声倒れ」といったところだ。サッカー解説者のセルジオ越後氏は6月21日、日刊スポーツへの寄稿で、この傾向を厳しく批判している。
「日本以外のチームがみんな素晴らしく見えるよ。よく走るし、戦う姿勢もある。無我夢中になって得点を取ろうとする。感動するんだ。日本はパス、パス、パス…ってイライラする。『自分たちのサッカー』と言ったって、全然通用していないじゃないか」
セルジオ氏がサッカー専門サイト「サッカーキング」に対して寄せたコメントは、さらに辛辣だ。
「一つ答えを出すとすれば、今日のこの試合で見せたプレーが、まさに『自分たちのサッカー』だよ。本来の力を出せていないのではなくて、これが世界における我々の本来の力なんだ」