震災で休止していた大槌町の「新山(しんやま)高原まつり」が4年ぶりに復活しました。6月15日、新山高原で開かれた祭りでは、自作の紙飛行機による対空時間コンテストがあり、神楽、虎舞、鹿子踊が勇壮、華麗な舞を見せました。
新山高原は町の西端に位置し、標高、約1千メートル、オレンジ色が鮮やかなレンゲツツジが群生しています。一帯は、国内最大規模の風力発電基地があることで知られ、43基の巨大な風車が電力を供給しています。
オープニングセレモニーで碇川(いかりがわ)豊町長は「震災で途絶えていた祭りの復活は感無量」とあいさつ。祭りを主催した町観光物産協会の千代川茂会長は「震災から3年がたち、やっと祭りが開催できる環境が整った。これから毎年、開いていきたい」と話しました。
震災で壊滅的な打撃を受けた大槌町は、これまで、観光面に気配りする余裕がありませんでした。しかし、町の経済を活性化させ、人口減少に歯止めをかけるためには、町の資源を見直しして町外から人を呼び込み、交流人口を増やしていく施策が欠かせません。観光はそのための柱の一つになります。
まず、手掛けたのが、震災後、実質的に休眠状態だった大槌町観光協会の再開でした。大槌町観光物産協会と名称を改めて4月から活動を始めました。観光客誘致や、特産品開発をめざし、新巻鮭や磯ラーメンのブランド化、吉里吉里海岸での海水浴場の復活、復興ツーリズムの展開といった事業を具体化します。「新山高原まつり」もその一環でした。
大槌町観光協会は震災前、大槌商工会に事務局を置き、会員は104人でした。震災で会長が亡くなり、会員が被災して廃業するなどし、業務を休止していました。協会の再開は町の復興のために多くの人が待ち望んでいました。
町は協会の活動を後押しするために、4月から産業振興部の商工労政課を商工観光課に改称し、新たに観光物産班を配置しました。町観光物産協会の事務局は町商工観光課に置かれています。
大槌町は、町の魅力を発信しようと、震災後、初の観光ポスターも作りました。「ひょっこりひょうたん島」のモデルとされる蓬莱島(ほうらいじま)に虹がかかるデザインで、城山公園、新山高原のツツジ、浪板海岸などが配置されています。キャッチコピーは「再び灯る希望の光。未来へ進む心と海の道しるべ」。観光面の復興も、一歩、また一歩と、進んでいます。
(大槌町総合政策課・但木汎)
連載【岩手・大槌町から】
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