「エルニーニョ冷夏」は景気にマイナス 日本経済に思わぬ伏兵現れる

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   全国的に猛暑と記録的な大雨など、荒れ気味の天気が続いているが、2014年は冷夏になるという。世界的に異常気象をもたらす「エルニーニョ現象」が発生するというのだ。低温、長雨などとなれば、農業生産に影響を与えるほか、人々の買い物やレジャーの意欲をそぎ、景気にはマイナスというのが経験則だ。デフレ脱却に向かう日本経済にとって、思わぬ伏兵ともいえ、政府も空模様に気をもんでいる。

   「エルニーニョ」とはスペイン語で神の子=イエス・キリストのこと。太平洋赤道域の日付変更線付近から、南米のペルー沿岸にかけて、海面水温が平年より高い状態が続く現象で、地球全体の大気の流れが変わる。

北米が大雨、オーストラリアは干ばつになりやすい

   数年に一度発生し、必ず異常気象になるわけではなく、程度もその都度、異なるが、一般に、日本付近では偏西風が平年より南寄りを吹き、太平洋高気圧の北への張り出しを抑えるため、気温が下がり、梅雨が長引くなど雨が多く降る傾向がある。世界では北米が大雨、オーストラリアは干ばつになりやすい。気象庁は2014年6月10日、5年ぶりにエルニーニョ現象が発生し、秋にかけて続く可能性が高いと発表している。

   1990年以降でエルニーニョの影響でひどい冷夏になったのが1993年と2003年。第一生命経済研究所が、今年7~9月期の景気への影響を試算したところ、2003年並みなら家計消費は8754億円(1.3%)押し下げられ実質国内総生産(GDP)は6768億円(0.52%)ほど落ち込み、1993年並みになると家計消費が1兆4812億円(2.3%)程度減り、実質GDPは1兆1452億円(0.87%)押し下げられるという結果になった。

   エルニーニョは直接的に日本の景気の足を引っ張るだけではなく、間接的にも影響を及ぼす。例えば、小麦の産地であるオーストラリアで干ばつが起きれば穀物相場の高騰を招くのは必至で、実際、2003年にはオーストラリアの小麦収穫量が半減して価格は一時、2001年末に比べて約5割も上昇した。今年も、例えばチョコレートの場合、エルニーニョでインドネシアなど主要生産国が天候不順に陥れば、供給量が減って一段と価格が上昇する懸念が台頭している。

ローソン、天候に応じて温かい商品を前倒しで投入

   こうした中で、小売業や消費財メーカーは、早くも冷夏の場合の対応策の検討を始めている。大手コンビニのファミリーマートは、過去のエルニーニョで冷やし麺の売り上げが大きく減った経験から、冷夏になったら電子レンジで加熱する温かい麺をいち早く投入する体制を整備。ローソンも、夏の終わりを実感し始める8月中旬から、おでんなどの秋向け商品を展開してきたが、エルニーニョをにらんで、天候に応じて温かい商品を前倒しで投入できるようにするという。「ガリガリ君」の赤城乳業は、過去に冷夏で売り上げが2割も落ち込んだことから、チョコレートやミルク味など秋シーズン向け商品の前倒し投入も検討。ヤマダなど家電量販店は、エアコン需要を前倒しで取り込むため、期間限定の特典を付けて早期購入を優遇するなどしている。

消費税率引き上げの判断にも影響しかねない

   エルニーニョには、政府も民間以上に気をもむ。安部内閣の高支持率はアベノミクスあればこそ。「景気が腰折れして株価が大きく下落すれば、内閣支持率も一緒に落ちかねない」(霞が関筋)といわれる。特に、消費税率を予定通り2015年10月に10%へ引き上げるか延期するかを、14年12月に決定する。その際、7~9月期のGDPが最重要指標になる。これまでのところ、足元の個人消費は、4月からの消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減が、夏場にかけて回復するとみられている。しかし、エルニーニョの影響次第で回復が思わしくなければ、消費税率引き上げの判断にも影響しかねない。財務省などは、天候の動向から目を離せない夏になりそうだ。

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