JAは「ワン・オブ・ゼム」の支持組織
複数の政界関係者によると、安倍首相や菅義偉官房長官は農業の成長産業化を進めるため、農協制度を抜本的に見直す必要性があるとの腹を固めている。政権が重要な成長戦略と位置づけるTPP交渉などに対して「組合員を大量動員して反対デモを繰り広げる姿が、首相周辺にはうとましく映っているのではないか」とこの関係者は語る。
1996年の小選挙区制導入以降、農協の後押しだけで当選できる議員はいなくなった。「自民党にとってJAが最大の支持母体であることは変わらないが、今はあくまでワン・オブ・ゼム」(内閣官房の幹部)。自民党とJAの力関係は様変わりしている。今秋にも内閣改造が想定される中、閣僚の有力候補となる農水族幹部が官邸に弓を引くような改革つぶしはできない事情もある。
農協改革の真価が問われるのは、今回の答申に沿って法案化が進む年末だ。これまで独占禁止法の適用除外や税制優遇などの対象となってきた協同組合組織をどう衣替えするのかなど、具体案の作成はこれからが本番。JAも巻き返しに手ぐすねひく中で、自民党農水族が官邸に「忠誠」を尽くすのか、「面従腹背」で終わるのかも、その時にははっきりすることになる。