かつては「汚い」「うるさい」「環境に悪い」と敬遠されてきたディーゼルエンジン搭載乗用車が見直されている。
2011年まで年間1万台にも満たなかった販売台数は2013年に7万台を超えた。排気ガスの問題で環境負荷が大きいとされたが、技術で克服。燃費性能の高さや加速のよさといった「走り」でも注目されている。
「トータルコスト」ではガソリン車よりも「お得」?
マツダは2014年夏以降に発売するコンパクトカー、「新型デミオ」に排気量1.5リットルの新型ディーゼルエンジンを搭載すると、6月10日に発表した。
搭載するエンジンは、「SKYACTIV‐D1.5」。すでに「マツダ CX‐5」などに搭載されている新世代クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV‐D 2.2」と同様に、低圧縮比を採用しながら「理想の燃焼」を追求。その結果、窒素酸化物(NOx)後処理装置なしで高い環境性能を実現しながら、2.5Lガソリンエンジン並みの、前へ押し出すような力強い走りと、高回転まで直線的に加速する優れた動力性能を実現した。騒音も少ない、という。
アイドリングストップ技術の「i‐stop」や減速エネルギー回生システム「i‐ELOOP」、高効率トランスミッション「SKYACTIV‐DRIVE」や「SKYACTIV‐MT」を組み合わせ、大幅に燃費を改善。軽量化し、コンパクトカーに最適なパワートレインへと進化させた。
新型ディーゼルエンジンの搭載によって、新型デミオの燃費は、燃料1リットルあたり30キロメートル前後となるという。
これはガソリン1リットルあたり27.6キロメートルを走る、低燃費トップクラスのコンパクトカー(ハイブリッド車と軽自動車を除く)を超える燃費のよさだ。
ディーゼル車の燃料は軽油。軽油の価格(1リットル144円程度)はガソリン(1リットル166円程度)より1割強安い。燃料費が安いことに加えて、燃費がガソリン車などと比べて遜色ないのだから、車種や月間走行距離などの「乗り方」にもよるが、ガソリン車よりディーゼル車のほうが「トータルコスト」で安くつく可能性は高い。
マツダは、「燃費のよさや走りのパワフルさ、加速もよく、長距離運転で疲れにくいといったディーゼル車のよさを、当社はわかっていました。環境性能などの問題点を技術力で克服して導入しました」と、胸を張る。
新型デミオのほか、新型「アクセラ」など3車種に搭載する計画だ。
「CX‐5」は8割弱がディーゼル車を選択
マツダは現在、2.2リットルのディーゼルエンジン「SKYACTIV‐D 2.2」を、多目的スポーツ車(SUV)の「CX‐5」や中型車「アテンザ」、「アクセラ」の3車種に搭載している。
新型デミオに搭載することで、ディーゼル車のすそ野拡大をめざすことになるが、マツダによると、「すでに『CX‐5』のユーザーの8割弱がディーゼル車を選んでいます」と話す。
「クルマの用途によって(ディーゼル車の)割合は違ってきますが、お客様に選んでもらえるようにラインナップを整えていきたい」という。
ディーゼル車はガソリン車に比べて車両価格が割高だが、現在国内で販売しているディーゼル車は排ガス規制に対応した「クリーンディーゼル車」で、ハイブリッド車とともにエコカー減税(自動車取得税と重量税が100%減税)の対象になっていることが多い。その減税効果もあり、販売台数を伸ばしている。
ディーゼル車の販売台数は、2013年に前年比8割増の7万6000台。2014年1~4月の販売も前年比5.2%増の2万7260台と増えている(日本自動車販売協会連合会調べ)。ディーゼル車は、欧州では新車販売の約5割を占めるとされ、「エコカー」として根付いている。燃費や環境性能の改善で、日本でも注目度が増している。