「技能労働者」の日給、震災前から7~9割も上昇 人手奪い合う建設業の人手不足は本当に深刻

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   牛丼チェーン店や居酒屋などの人手不足が、建設業や運輸業などの幅広い業種に広がっている。

   なかでも建設業は、働き手の減少という構造的な要因もあるが、景気回復で飲食・サービス業や小売業などとのあいだでアルバイトの奪い合いが起き、さらには建設業者のあいだでも、専門職にあたる「技能労働者」が確保できずにいるという。

進む建設業の高齢化、55歳以上の就労者数156万人

建設業の人手不足はかなり深刻だ!
建設業の人手不足はかなり深刻だ!

   建設業の人手不足がますます深刻になっている。背景には、東日本大震災の復興事業や全国的な住宅市場の回復、さらには景気浮揚策として行われている公共投資の拡大がある。

   みずほ総合研究所のレポートによると、2013年の建設投資(全産業供給指数の住宅投資及び公共投資・構造物、設備投資・構造物の加重平均)は、公共投資を中心に前年比で13.7%上昇した。

   一方、2013年の建設業就業者は499万人と、2012年に比べて4万人減少。その結果、13年12月の日銀短観では建設業の雇用人員判断DIが1992年以来の水準にまで低下しており、「人手不足感は2006年前後の不動産のミニバブル期に比べてもはるかに強まっている」と指摘する。

   建設業の人手不足の一因には、過去の新卒採用の減少や離職率の上昇などによって、若者労働者が不足しているとの見方が支配的だ。「キツイ」力仕事を敬遠する傾向が強まっていることもある。

   建設業の就労者数がピークだった1995年と2010年を比べると、55歳以上の就労者数はほぼ変わっていない(153万人→156万人)。それなのに、35歳未満および35~54歳の就労者数はそれぞれ100万人減少した。構成比でみると、2013年に55歳以上は約34%にのぼるという。

「人手不足の状態はオリンピック後も続く」?

   若者労働者の減少、就業者の高齢化が進むなか、2012年からは団塊の世代が65歳を迎えており、退職者の増加によって将来にわたって働き手が不足する懸念も強い。

   人手不足の現状を、2020年の東京オリンピックまでとみている建設業者も少なくないが、建設経済研究所の角南国隆研究理事は、流通情報誌「月刊 激流」(2014年7月号)で「人手不足の状態はオリンピック後も続く」と指摘する。

   技能労働者、つまり職人の世界は「10年で一人前」とされる。そのため、外国人労働者の受け入れでは間に合わず、「不足する技能労働者を補うには国内の若者に頼るほかはないのに、建設業の若者の就労者は少ない。それぞれの企業が人材を確保・育成しなければ、仕事が回らず、黒字倒産もあり得る」(角南研究理事)というほどの事態なのだ。

   建設業の人手不足は、厚生労働省の2014年5月の労働経済動向の四半期調査でも明らか。それによると、建設業の正社員が「不足している」と答えた事業所の割合から「過剰」を引いた労働者過不足判断DIはプラス30だった。前回調査(2月)からは14ポイント下がったとはいえ、業種別では医療・福祉がプラス43、生活関連サービス業・娯楽業がプラス42とともに、採用しにくい状況が続いている。

日給で、とび工が2万3800円、溶接工が2万6300円

   厚労省は、「建設業では重機オペレーターをはじめ、資格や経験が必要な人材が重宝される傾向で、アルバイトよりも正社員として採用するケースがほとんど。人手不足のため、業者間で技能労働者の奪い合いが起こっている状況です」と説明する。

   そんなことから、建設業の土木作業員や重機のオペレーションなどのアルバイトの給料は、急上昇している。6月16日時点で、ハローワークでは日給で7000円~8000円、月給では16万8000円~21万5000円程度が相場だが、なかには日給で1万円、月給24万円で募集する建設業者もある。

   これが型枠工やとび工、溶接工などの資格を有する「技能労働者」になると、さらに上昇。たとえば、コンクリートを流し込み固める枠をつくる型枠工が、東京で日給2万2800円、とび工が2万3800円、溶接工が2万6300円(国土交通省の公共工事設計労務単価ベース、2013年12月)と、東日本大震災があった2011年3月以前と比べると7~9割も上昇している。

   国土交通省によると、こうした技能労働者は、2008年以降はおむね過剰傾向にあったが、11年7月から不足に転じている。震災の復興工事が進む東北に多く集まる傾向にあるため、東京などでは人件費が急上昇しているようだ。

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