年金制度は「心配ご無用」なのか 政府検証に潜む「甘い前提」とは

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   少子高齢化で保険料を払う現役世代が減っていく一方、年金を受給する高齢者が増えていけば、年金制度はもたない――国民の多くが漠然と抱くイメージだが、政府は「心配ご無用」と言わんばかりの試算を発表した。だが、成長率の見通しなど、前提が甘いという批判が出ている。

   年金制度は、自分が払った掛け金を積み立てて将来もらうのでなく、現役世代が払う掛け金で現在の受給者に払う方式なので、人口構成などの長期的な影響が大きい。このため、100年先まで見通して制度を維持できるかを検証するため、経済成長や人口構成などの見通しを5年ごとに点検している。

経済前提に8通りの設定

   これを「年金の財政検証」といい、そこでポイントになる数字が、モデル世帯(夫のボーナス込みの平均手取り月額34万8000円、妻は40年間専業主婦)の給付水準(現役男性の平均的手取り額に対する年金額の割合)。2014年度は62.7%だが、政府は将来にわたり給付水準50%維持を国民に約束している。

   今回、6月3日に厚生労働省が発表した財政検証は、「アベノミクス」で成長が高まる例から実質マイナス成長となる例まで経済前提をA~Hの8通り(2009年は3通り)設定している。

   ベースは内閣府が1月にまとめた2013~22年度の経済財政見通し。まず「経済再生」を見込んだ5ケース(A~E)の予測では、アベノミクスの効果が出て、女性や高齢者の労働市場への参加が進むと想定。中長期の実質経済成長率1.4~0.4、年金積立金の運用利回りが5.4~4.2%となるとして、2043年度の給付水準は50.9~50.6%となり、政府が約束する50%ラインは超える。一方、労働市場への参加が今の水準にとどまる「参考」の3ケース(F~H)は、成長率0.1~マイナス0.4%、運用利回り4.0~2.3%で、給付水準は50%を切り、最も悲観的なHケースは国民年金積立金が枯渇し、給付水準は35~37%に落ち込むとした。

   この結果について田村憲久厚生労働相は「一定程度、年金の安定性が保たれていると確認できた」と胸を張った。しかし、合計特殊出生率(女性が生涯で産む子どもの数)1.35、国民年金の保険料納付率65%と仮定しているほか、「技術革新などの生産性上昇率がバブル期並みに達すると想定するなど甘い」(民間シンクタンクのエコノミスト)との指摘もある。

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