平日の通勤時間帯と重なった、サッカーワールドカップ(W杯)の日本-ギリシャ戦。東京・渋谷駅前のスクランブル交差点周辺は、初戦で痴漢騒動が起きたこともあってかさらに厳しい警備体制が敷かれた。
斜め横断を禁止し、道路を渡る際も警官が左右を「分断」して行きかうサポーター同士が「ハイタッチ」できない状態となった。日本代表が勝ちきれなかったこともあり、大騒ぎは起きなかった。
「ちょっとやり過ぎじゃないの」とぼやく声も
試合終了から5分とたたないうちに、渋谷センター街には日本代表のユニホームをまとったサポーターの姿が増えてきた。近くの店で、ギリシャ戦の中継を観戦した人たちだ。午前9時を過ぎると、スクランブル交差点周辺は「サムライブルー」に染まっていった。
初戦のコートジボワール戦後は許可された斜め横断は、この日は禁止。周辺は大勢の警官の姿があり、しきりに「ルールを守って横断してください」と呼びかける。信号が青に変わると、複数人の警官が黄色いテープを持って一斉に横断歩道を左右に分けるように並び、「行く人」と「来る人」の通り道を確保。スムーズな通行を促すと同時に、行き交う人たちがハイタッチできない状態となった。サポーターからは「ちょっとやり過ぎじゃないの」とぼやく声も聞こえたが、警察の徹底ガードの効果か、通行人の数がピークに達した時間帯も横断を妨げるような人は現れず、混乱は起きなかった。
ちょっとした「騒ぎ」が起きたのは9時30分ごろ。センター街入り口付近に人だかりができた。W杯優勝トロフィーのレプリカや日の丸を掲げ、「ニッポンコール」を繰り返す一団が現れたのだ。サポーターも足を止め、一部の人たちは腕を振り上げて「参戦」。一時は身動きができないほどの人だかりとなった。
「通行の邪魔になります」と集団を排除
しかし、数分もたたないうちに20人ほどの警官がやってくると、メガホンで「通行の邪魔になります。立ち止まらないでください」と警告し、排除に乗り出した。それでも一部で「ニッポンコール」は続いたが、数分もすると集団は「解散」。多くの警官がそのまま残り、再び騒ぎが起きるのを防いだ。
試合終了から1時間ほどで、ユニホーム姿はかなり少なくなった。地下鉄の駅の屋根に上るような「大暴れ」や痴漢騒動はなかったようだ。
周りからは「(日本が)W杯出場を決めたときはあんなにうれしかったのに…」という嘆き節が聞こえてきた。確かにこの日の引き分けで、日本代表は決勝トーナメント出場に可能性は残したものの、極めて厳しくなった。「勝って大喜び」でも「負けてヤケクソ」でもなく、「スコアレスドロー」となって、サポーターも気持ちをどこに持っていけばいいのか、分からなかったのかもしれない。