「増税ラッシュ」が止まない。消費税率が引き上げられたばかりだというのに、今度は「携帯電話」への課税が検討されている。
自民党の有志議員が、議員連盟「携帯電話問題懇話会」を設立。2014年6月18日に総会を開き、野田毅税制調査会長ら約15人が出席し、会長には中山泰秀衆院議員が就いた。
「国民のほぼ全員を敵に回しましたね」
自民党の有志議員による「携帯電話問題懇話会」は、自動車税のように携帯電話の保有者を対象に、携帯電話1台につき数百円程度の課税を導入する仕組みを検討。ソーシャルネットワークサービス(SNS)を使った犯罪などが相次いでいることから、「安全対策の強化に向けた予算の確保」などに充てるという。
財政再建などの観点から、今秋の臨時国会が開かれるころまでに提言を取りまとめる方針。この日の会合では、海外の導入事例の紹介や、「公共の道路を使っている自動車も税金を払っているわけだから、公共の電波を使っている携帯電話も税金を払うべき」との意見があったようだ。
いまや生活必需品となっている携帯電話だけに、インターネットでは猛反発。
「はぁ、本当ですか? 絶対払いたくないです」
「消費税を上げたばかりなのに…」
「自動車税の代わりって。まずは身を切る事から始めるのが筋ではないですか?」
といった声があがっている。
さらに、議連会長の中山泰秀議員のフェイスブックにも、
「要するに、取りやすいところから取ろうと思ってるだけでしょう」
「携帯電話税を取るのであれば、通話料から消費税は免除してください。でないと、税の二重取り(お酒やガソリンと同じ)となってしまいます」
「国民のほぼ全員を敵に回しましたね。このままでは次は落選しますよ」
などといった声が寄せられており、これに対して中山議員も、
「ご関心をお寄せ頂きまして、どうもありがとうございます。色々なご意見を、幅広くお伺いして行きたいと考えています。報道をご覧になられると、言葉ばかりが先行しており、驚きやご不安も多々あろうかと思います。先ずは低年齢化問題、犯罪対策から始めて参ります」と、コメントしている。
1億4000万件超が加入、広く薄く「課税できる」
とはいえ、財政再建のため、「増税」は避けられなくなっている。一方で法人減税などの実施を「約束」しており、新たな財源の確保は欠かせない。たばこや酒などの嗜好品をはじめ、海外からインターネットで配信されるゲームや書籍の電子商取引、パチンコや競馬などの娯楽分野は、増税の検討対象になりやすい。
携帯電話などの情報通信分野もそう。じつは携帯電話への課税は、東日本大震災後の復興財源の一つとして、民主党政権当時の与謝野馨経済財政担当相がぶち上げたことがあった。「(1台あたり)1日5円から10円程度もらえば数千億円の規模になる」と、通信会社を対象に、携帯電話の端末数や基地局数などに応じて徴求する電波利用料を引き上げる案が浮上した。
この案であれば、携帯電話の利用者が直接負担することはないが、電波利用料の引き上げ分を通信会社が通話料や通信料に上乗せすれば、結果的には税負担が増す。
とはいえ、携帯電話の加入契約数は2013年12月末時点の累計で、1億4105万2365件(総務省調べ)。広く、薄く税金をかければ、一人あたりの負担は軽くなるとの考え方がある。しかも増税で価格が多少上がっても、なかなか手放せないとの事情も見込める。
一方、海外の事例では、フランスの有識者委員会が2014年5月にスマートフォンやタブレット端末を販売する会社などを対象に課税する案を政府に提言している。
また、2009年に金融市場でデフォルト懸念が広がったギリシャでは、欧州委員会(EC)の度重なる財政規律の健全化勧告によって、政府がヨットや大型自動車、燃料、宝くじへの課税を強化した。このとき、携帯電話も対象になっている。