ワールドカップ(W杯)ブラジル大会7日目の2014年6月18日(日本時間19日)、前回王者のスペインがオランダに続きチリにも敗れ、1次リーグで姿を消すことが決まった。優勝候補のまさかの早期敗退は、世界中のサッカーファンに衝撃を与えた。
だがインターネット上をみてみると、試合中継を見ていた人たちからは「スペイン敗北」に対する声もさることながら、「実況」に関する意見が数多く投稿されている。その多くが「実況がスペインに肩入れしすぎていた」といった苦情だ。
チリのプレーに「まさにスペインサッカーを見ているよう」
スペイン対チリ戦はフジテレビ系のテレビ局が放送し、現地実況はフジテレビの中村光宏アナウンサー(29)、現地解説は藤田俊哉氏(42)が担当した。
スペインは13日の初戦で、前回大会(南アフリカ大会)の決勝相手だったオランダと再び対戦したが、1-5で大敗を喫し、早くも崖っぷちに立たされていた。それだけに2戦目の対チリ戦にはかなりの注目が集まり、日本のサッカーファンも朝4時からの中継を見守っていたようだ。
だが試合が始まってから20分後、先制点をあげたのはチリだった。その後もスペイン代表らしいパスワークはあまり見られず、勢いを保ったチリが43分に追加点を入れた。
そうした状況下で、実況の中村アナは「王者スペインらしさがまだ見えてきません」「このパスも合わない!何かがおかしい!」などとスペイン代表の「らしくない」プレーを強調し、藤田氏も話を振られ調子を合わせた。
後半戦ではその傾向が顕著となった。中村アナは「最強スペイン復活のきっかけはいつ訪れるのか」「タレントは揃っています、いつでも点が取れる選手です」と盛り上げ、ミスが目立つと「正直こんなスペインは見たことがありません」と驚く。
呼ぶ名前もスペイン選手の方が多く、藤田氏からもチリ側のプレーや選手についての具体的な解説はほとんど聞かれなかった。乗りに乗っているチリのプレーについて、中村アナは「(チリのプレーは)ほんとにリードしているときのスペインのサッカーですよね」「まさにスペインサッカーを見ているようなチリの素晴らしい攻撃です」と評していた。
「前回大会優勝国のスペインがこのまま終わっていいわけがありません!」と意気込む中村アナだったが、スペインは6分間のアディショナルタイムでも苦戦を強いられ、得点のないまま試合は終了した。
「歴史に残るヒドさ」「完全にチリの予習不足」
もちろん、実況が巻き返しを図る側の視点で語ることは珍しいことではなく、それが前回王者であり有名選手も多いスペイン代表ならなおさらだろう。そもそもコアなサッカーファンは知識豊富な実況と解説による海外サッカー中継を見慣れていることもあり、民放の中継には手厳しい傾向にある。
だがそうした事情を考慮しても、今回はチリ代表に関する情報があまりに少なく、本来求められる正確な実況、的確な解説という部分が十分でなかったと受け取られたようだ。
ツイッターなどには、
「歴史に残るヒドさだった」
「今日の試合の逆MVPはフジテレビの実況」
「スペインの交代枠はこいつらの交代に使うべきだった」
「途中からフジの偏向実況を楽しむ試合になってしまった」
「『FIFAランク1位 最強のスペインが!』ってセリフが馬鹿っぽい」
といった視聴者からの意見が続々と書き込まれている。
また、チリ代表への言及が少なかったことについては「フジテレビの方針として、『スペイン推し』ということなのかと思ったが、中村アナの単純な勉強不足説によるチリ代表実況なしの可能性出てきたな」「完全にチリの予習不足じゃねーか」といった指摘も多数出ていた。
ちなみに日本時間20日4時からはフジテレビ系でウルグアイ対イングランド戦の中継が予定されているが、実況は森昭一郎アナウンサー、解説は清水秀彦氏が担当する。