ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手のmixi(ミクシィ)の朝倉祐介社長が、日経ビジネスオンラインが2014年6月16日に配信した自身のインタビュー記事に、「了解なく記事化された」「約束違反」と噛みついた。
朝倉社長はコンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン出身で、30歳の若さで社長に就任。ところが、わずか1年で退き、顧問に就くことが決まっている。
「お近づきまで」と応じた雑談が記事に
ミクシィは、朝倉祐介社長(31)が2014年6月24日付で顧問に退き、森田仁基執行役員(37)が社長に就くことを、この2月に発表した。朝倉社長は会見で、スマートフォン向けゲーム「モンスターストライク」のヒットなどで「2014年3月期の業績が黒字転換する見通しとなり、再生に一定のメドが立った」と、退任の理由を説明している。
ミクシィはSNS事業の苦戦で業績不振に陥っていた。それを朝倉社長がわずか1年で立て直し、さらに6月17日には株価が一時、前日比3000円(21.4%)高の1万7040円とストップ高まで上昇して年初来高値を更新。2800億円まで上昇した時価総額はサイバーエージェントのそれを上回り、東証マザーズで首位となって「復調」を印象づけた。
日経ビジネスに掲載されたのは、そんな朝倉社長の退任直前のインタビュー記事、「渦中のミクシィ社長を離島で直撃」だ。社長交代の舞台裏や今後の身の振り方などをフランクに語っている。
朝倉社長は取材に、「一応まだ社長です」としながらも、仕事に区切りがついたことを明かし、リラックスムードで応じたようだ。
朝倉社長は社長退任の発表後、メディアにはほとんど姿を現すことはなかった。そんな注目の人物のインタビュー記事だけに、ネットの関心も高く、多くの好意的なコメントが寄せられていた。なかには
「まだ社長なのにこんなに喋っていいのだろうか」
と、リストラや「モンスターストライク」についての踏み込んだ発言に、慮る声もあった。
ところが、朝倉社長は6月17日の「NewsPicks」へのコメントで、「この記事、プライベートの場でもあり取材にはお応えできない旨をお伝えしたところ、記事にはしない、単にお近づきまでにということで応じた雑談を了解なく記事化されたものです」と明かした。
しかも、「内容も私が決して口にしないようなフレーズや尾ひれが加えられ、口にした内容であったとしても意図的に異なる文脈に拡大解釈された内容が掲載されている上に、了解なく撮影された写真が使用されており、唖然とした次第です」という。
「記事にしない」という約束ではなかった!
これに驚いたのは「NewsPicks」など、インターネットの読者だ。日経ビジネス(日経BP)の取材方法を、非難する声が浴びせられている。
「日経も三流メディアに落ちぶれてしまいましたね」
「約束を破った日経は最悪だと思う」
「記者のモラルハザードがひどい」
「オフレコという言葉は、ここ数年踏みにじられるのが当たり前になった」
「マスコミが見ているのは、会社の売り上げだけ」
といった具合。なかには、
「朝倉さんも、マスコミに対する認識が甘いなぁ。まもなく社長を退任するとわかっているのだから、関係を維持する必要もないですし、朝倉さんは口を開くべきじゃなかった」
とのコメントもみられる。
朝倉社長は「記者と取材対象の間には一定の緊張関係があって然るべきだと思いますし、単に悪口書かれるだけなら慣れっこなのですが、こういう明らかな約束違反について日経BP社はどうお考えなのか、見解を伺っているところです」とも書いている。
J‐CASTニュースも事実確認を含め、日経BPに聞いてみた。
日経BPは、
「記者に取材当時の状況を確認したところ、朝倉様のお話をお聞きする中で、『プライベートで来ているので』というお話はありましたが、『記事にしない』というお約束ではなかったと認識しております」
と話す。
両者の言い分は、真っ向から対立している。