サッカー韓国代表が、ワールドカップ(W杯)ブラジル大会でロシア代表と激突した。両国は、ソチ冬季五輪のフィギュアスケート女子での金メダルを巡り因縁を抱えた間柄だ。
試合は韓国が先制、追うロシアが後半に同点ゴールを決めて引き分けた。だが試合後、韓国では「ロシアのプレーはオフサイドだったのではないか」との意見が出たという。
韓国代表監督「オフサイドではないと思った」
ロシアの得点シーンは後半29分。ロシアのシュートを韓国のゴールキーパーがはじき、混戦からこぼれた球がロシア選手の胸に当たった後、別の選手が拾って蹴り込み、ゴールにつなげた。
この場面、直前で複数の韓国の選手が手を挙げて審判に「オフサイドじゃないか」とアピールしている。だが審判団はこれを認めなかった。同点となった直後、韓国側が主審に抗議をした様子はない。
だが、ピッチの外ではオフサイド論争が起きていた。韓国のスポーツ紙「朝鮮スポーツ」電子版は2014年6月18日付の記事で、ゴールしたロシア選手がオフサイドの位置にいたようだったとして、審判が旗を上げてもおかしくなかったと主張した。さらに「今大会ではオフサイドを巡る誤審が多い」と続け、正確なジャッジを心掛けてほしいと国際サッカー連盟(FIFA)に注文をつけた。
試合後には、こんなやり取りがあったという。韓国紙・中央日報電子版(日本語)によると、韓国代表の洪明甫(ホン・ミョンボ)監督へのインタビューで、報道陣から「ロシアの同点ゴールについてどう思うか。オフサイドの状況のようにも見えたが」との質問が出た。洪監督は「韓国ベンチの反対側で起きたことなのでオフサイド状況であったかどうかは分からない」としつつも、オフサイドではないと思ったと述べた。
韓国メディアが色めき立つのは、ロシアとの「因縁」のためだろうか。2月のソチ冬季五輪では、フィギュア女子で金妍兒(キム・ヨナ)選手が銀メダル、地元ロシアのソトニコワ選手が金メダルに輝いた。韓国では「採点が不公正だ」との世論が巻き起こり、韓国スケート連盟が提訴する事態に発展した。最終的には国際スケート連盟が棄却したが、ロシアへのしこりは残ったかもしれない。
元代表選手は「手をあげるのではなく足を動かせ」
試合を中継したTBSは開始前、こんな映像を流した。2002年冬のソルトレークシティ五輪、ショートトラック男子で金メダルとみられた韓国選手が、米国選手を妨害したとして失格となり、韓国内では米国選手に対する怒りが渦巻いた。同年のW杯日韓大会で、韓国はグループリーグで米国と対戦。ゴールを決めた韓国選手が米側を挑発するような「スケートパフォーマンス」を見せた。この時のように今回も、冬季五輪の「因縁」を抱えたロシアが相手だとあおり気味に伝えたのだ。
ただ、そこまで韓国のサッカーファンがロシアを意識していたかは微妙だ。前出の「スポーツ朝鮮」の記事に対しては、「審判が公正でなかった」という書き込みはあるものの、少数だった。
Jリーグの清水エスパルスなどで活躍し、現在は韓国のテレビ局でサッカー解説者となっている元韓国代表、安貞桓(アン・ジョンファン)氏はロシア戦を解説し、中央日報で「問題のシーン」について意見を述べている。ロシア選手のゴールの際に数人の韓国選手が足をとめ、手を挙げてアピールした点について、「判定は審判がすることであり、選手はホイッスルが鳴るまで全力を尽くしてプレーしなければいけない。手をあげるのではなく、素早く足を動かして相手を防ぐべきだった」と指摘した。これに同調する韓国のサッカーファンは多い。W杯前の強化試合で連敗するなど、いまひとつさえない代表チームに対して、「もっとしっかりしろ」と考えているようだ。