サッポロビールは、価格が安い「第3のビール」として販売してきた「極ZERO(ゴクゼロ)」を、より割高な発泡酒として2014年7月中旬に再発売する。その理由が、国税庁から「第3のビールではない可能性がある」と指摘を受けたためというから、大手メーカーの製品としては異例だ。
ビール類の税率は、酒税法で細かく定められており、「世界初の製法」を採用する過程で、国税当局と食い違いが生じた可能性があるというが、せっかくのヒット商品が思わぬ形でつまずいた格好で、経営への影響も懸念される。
「詳細は説明できない」
低価格を武器に、年々販売量を伸ばしている「第3のビール」。350ミリリットル缶当たりの酒税額は28円で、ビール(77円)、発泡酒(46.98円)に比べて少ない。税額は麦芽比率など原料や製法によって決められる。各社が開発に力を入れた結果、ビールに近い味を実現し、今やビール類全体の36%以上を「第3のビール」が占める。
「第3のビール」ブームを作ったのは、他ならぬサッポロだった。2004年、原材料に麦芽を使用せず、エンドウ豆由来の「エンドウたんぱく」を利用した「ドラフトワン」を全国発売し、瞬く間に大ヒット。その後、サッポロは「麦とホップ」もヒットさせたが、キリンビールの「のどごし<生>」やサントリー酒類「金麦」などに押され気味だった。劣勢を跳ね返す「切り札」として、開発に4年をかけ昨年6月に市場に送り込んだのが「極ZERO」だ。
「極ZERO」は「プリン体ゼロ」「糖質ゼロ」を世界で初めて実現した商品だと謳い、健康志向の消費者をとらえた。「麦芽、大麦、ホップの使用量を最適化し、プリン体フリー原料を組み合わせた独自の製造方法」だという。
「第3のビール」として認められる条件は麦芽比率以外にも細かく設定されている。条件をクリアしているかどうかを巡り、国税当局と見解が異なった可能性がある。今年1月、国税庁から照会を受け、社内で製造方法や法令解釈の自主検証を行ってきた。サッポロは「第3のビールに該当すると認識している」としているが、もし該当しない場合は顧客の混乱が避けられないため、自主的に販売終了と再発売を決めた。ただ、具体的に何が問題なのかなど詳細は「製品開発上の営業秘密のため説明できない」としている。