常に日本に批判的な論調で知られる中国共産党系の環球時報が、2014年6月16日付の1面で「自衛隊が宮古島にミサイル配備を完了した」などと報じ、日本が中国に対して臨戦態勢であるかのような主張を展開した。
だが、現時点で宮古島へのミサイル配備は確認されておらず、環球時報が記事の根拠としている日本メディアの記事も確認できない。防衛省は南西諸島防衛のために奄美大島、宮古島、石垣島などに陸自部隊の配置を検討しているが、これに尾ひれがついたようだ。
「陸自配備候補地選定に向けた調査への協力」求めたばかり
記事の見出しは、「日本が中国に向けたミサイルを続けざまに配備」という日本への警戒感をあらわにしたもの。記事の書き出しも、
「日本の自衛隊は、釣魚島(尖閣諸島の中国側の呼称)に最も近い宮古島にミサイルの配備を完了した。一連の対中軍備配備が6月15日にメディアで明らかになったのを見ると、日本当局は、再度中国の目の前で刀を振り回すサムライのようだ」
などと尖閣諸島に近い宮古島にミサイルが配備され、日本側が中国を威嚇しているとして非難する内容だ。
環球時報の記事では、南西諸島防衛に向けた動きを多くの日本メディアを引用しながら紹介しているが、最も大きな根拠になっているのは、時事通信が5月15日に、
「南西諸島の防衛を強化するために、陸上自衛隊は88式地対艦ミサイルを釣魚島から170キロしか離れていない沖縄の宮古島に輸送し、ミサイルの配備を完了した」
と報じたとされることだ。だが、直近で時事通信が宮古島について報じたのは6月12日で、15日には宮古島に関する記事配信は確認できない。6月12日の記事にしても、その内容は、武田良太防衛副大臣が同日、下地敏彦宮古島市長を訪ねたという内容。武田副大臣は下地市長に対して、宮古島に陸自の部隊配備を検討していることを説明し、候補地選定に向けた調査への協力を求めている。このような段階で、「ミサイルの配備が完了」することはあり得ない。
ミサイルが持ち込まれたのは13年11月の演習が最後
2013年11月に行われた陸海空3自衛隊の統合演習では、88式地対艦ミサイル4基を那覇に、1基を宮古島に配置している。だが、このミサイルは演習終了直後に撤収されている。宮古島市役所によると、宮古島に最後にミサイルが持ち込まれたのはこの演習の時だ。「配備されれば大騒ぎになるはず」とも話しており、現時点ではミサイルは持ち込まれていないようだ。
演習の際、陸自は演習の目的を「島嶼(とうしょ)防衛」だと説明し、特定の国を念頭に置いていないことを強調していた。だが、演習の内容は事実上の離島奪還訓練で、中国側は文字通り「島を奪われる」などと反発していた。中国側は、今でもこの演習を脅威だと受け取っているようだ。
この環球時報の記事には、中華圏メディアからも疑問視する声があがっている。例えば香港のフェニックステレビのリー・ミャオ東京支局長は微博(ウェイボー)で、
「防衛省、宮古島市役所、宮古島の反対派住民に取材したが、みんな否定している。もし本当に配備されているのならば、どうしてみんな知らないのだろうか」
と、記事が誤報だと断じている。