数多くのアイドルグループがひしめき合う中、夢やぶれて芸能界を去っていく若き女性も少なくない。
東京・北区赤羽発のアイドルグループ「Nゼロ(元AKBN 0)」(エヌゼロカッコもとエーケービーエヌゼロ)でもメンバーの脱退が発表されたが、それについて書かれた運営側のブログの内容が話題になっている。メンバーが運営側に抱えていた不満の内容を明かした上、「変なプライドは捨てろ」「メンバーが誰もいなくなってもいい」との見解を示したからだ。
会って、話せて、打ち合わせができる募金アイドル
「Nゼロ」は2010年に誕生したグループだ。「資金ゼロ、所属アイドルゼロ、稽古場なし、衣装なし、専用劇場なし」というところからスタートして、真剣にNHK紅白歌合戦出場を目指す。数回のオーディションを経て、現在は「会って、話せて、打ち合わせができる募金アイドル」をキャッチフレーズに、14人のメンバーが活動している。
ファンのことは「クライアント様」と呼び、握手券、トーク券、2ショット写真券、打ち合わせ(デート)券、さんぽ券、グッズ・CD販売、ライブなどで資金を獲得している。
プライベートでの恋愛は自由だが、発覚すると「売り上げ試練」が課せられ、それがクリアできないと中退(脱退)となってしまう。「クライアント様」やスタッフとプライベートで繋がることは厳禁だ。
活動資金によってステップが定められていて、現在はCDデビュー、北区赤羽会館でのコンサート、日本青年館(東京・新宿区)大ホールでのコンサートを達成している。次は2000万円貯まったら中野サンプラザ(東京・中野区)でのコンサートが待ち構えていて、最終目標の紅白歌合戦出場が果たせたら即日解散―という個性的なアイドルグループだ。
「事務所について行けない」「行くことが最近怖くなってた」
そんなNゼロから、7期生の高山りぽぽ莉紗さん(20)と、9期生の米澤リッタン璃子さん(15)が、2014年7月6日のライブをもって脱退することが、6月15日に発表された。
高山さんはこの日ツイッターで
「正直に言えばNゼロのシステムについていけない精神状態と周りからの言葉で行くことが最近怖くなってたのは事実今も行けない。契約切れる(編注:14年7月にNゼロのマネージメントを担当しているカンドウとの契約が終了する)となってこのままここにいるのはメンバーやスタッフさんに迷惑かかると思い中退決意しました」(原文ママ)
と、決断の理由を明かした。
米澤さんも、「Nゼロはだいすき!すごくだいすき!ファンの方もメンバーもだいすきです だけどいつのまにか事務所について行けないって思ってました」とツイートしている。
Nゼロ運営のブログでも14年6月16日、2人の脱退の発表があった。米澤さんが運営に抱いていた主な不満について、「チラシを配ってはいけないところで配るのが疑問」、「もっとライブをやりたいのに、交流がメインで、ライブが二の次なのが疑問」、「会議室ではなく、もっとステージで歌いたい」、「レッスンを鏡のあるスタジオでやりたい」だったと、赤裸々に明かした。
その上で「会社の見解」として、以下のように記している。
「メンバーが会社に不満や疑問を持って当然です。世の中の芸能人で所属事務所に不満をもっていない人なんていません。しかし、会社としては、タレントの要望を聞いてあげたいと思っても、できることと、できないことがあります。大きいのは、人の気持ちは時間とともに、変わっていくということです。メンバーも最初は我慢できていたことが、だんだん時間が経つと我慢ができなくなります。(中略)見習いや、正規メンバーになったときにはモチベーションも高いので、不満に思っていないことが、時間の経過とともに、我慢ができなくなってきます。会社としては、運営方法を変えていなくても、どんどん古いメンバーの不満は大きくなっていきます。だからと言って、基本的な運営方針を変えることはできません。方針を変えるとNゼロではなくなってしまいます」
「節約を楽しむくらいの気持ちじゃないとNゼロではやっていけない」
「チラシを配ってはいけないところで配る」については、最近は道路使用許可証を取っていると反論、「要はチラシを配りたくないからそう言うのです」と、暗にチラシ配りに不満を持つメンバーを批判した。
「もっとライブをやりたい」「会議室で歌いたくない」には「メンバーになったときには、『Nゼロは、どんな場所でも歌う歌手です』と説明」しているとして、「会議室で歌ってこそ、Nゼロ」という独自の運営方針を主張。「そもそも、もっとライブをやりたいというのであれば、もっと平日のライブに参加して」と注文まで付けた。
「レッスンを鏡のあるスタジオで」には、高いスタジオを借りていたらすぐに活動資金が尽きてしまうとして、「節約を楽しむくらいの気持ちじゃないとNゼロではやっていけません」と諭した。
米澤さんにも説明したところ、「それで、メンバーが一人もいなくなったらどうするんですか?」と聞かれたという。答えはこうだ。
「別にそれでもいいよ。最初はゼロからスタートしたから、振り出しに戻るだけだからね。また1期生を募集するよ」
厳しいとも思える運営側のやり方に、ファンも色々と考えることがあったようだ。ツイッターやブログのコメント欄には、
「Nゼロの運営さんの道の歩み方、カッコいいなぁ」
「運営側とメンバーの気持ちの本気度が違いすぎますね」
「辛口なところがこのブログの特徴なのかもしれませんが、特に心のバランスを崩している子には追い打ちになることがあるかもしれません」
「メンバーに対してブレない方針で対処するのは、そうしないと運営できないのであれば仕方ないです。でもファンの気持ちは?僕ならこんなブログ書かれたら、引きます。冷めます」
など、賛否両論書き込まれている。