テレビ局に内定している学生たちが、飲みの席で「勝ち組意識」からくる「傲慢トーク」を繰り広げていたと日本テレビ出身の水島宏明・法政大学教授が指摘したことを発端に、インターネット上で議論が盛り上がっている。
記事は2014年6月12日、Yahoo!ニュース「個人」のコーナーに掲載された。
「オマエらは別にすごくはない。単に運が良かっただけだ」
水島氏は複数の内定者をソースに、東京キー局に内定した学生80人あまりが集まった「内定者飲み会」での会話を紹介していた。彼らの口からは、
「オレたちって、すごくね?」
「だってさ、各局の応募者2万人のうちから選ばれた20人なんだぜ」
「どうしてこの飲み会に週刊誌が来ないのかな~、だってオレたち、これから日本の報道の中心を担うメンバーなんだぜ。週刊誌の記者がいたら良い記事が書けるのに何で来ないんだろう?」
などと自信たっぷりすぎる主張が語られていたという。
水島氏は内定に至るまでの倍率の高さや年収の高さを指摘し、彼らが「勝ち組」であることは認めるものの、内定しただけで不遜な自慢トークに熱中する内定者については「バカな若者たち」と切って捨てる。「勝ち組意識」が強いと本当の「庶民の痛み」が分からず、「上から目線」なテレビ報道につながると指摘し、そうした意識が内定者の間ですでに広がっていることに驚きを示した。
その上で、テレビ局OBであり大学教員である立場から、「オマエらは別にすごくはない。単に運が良かっただけだ。自慢しているんじゃないよ。バカモノ!」「そんなことで舞い上がっている程度の人間には、その先はない」などと忠告をしていた。
記事は大変な反響を呼び、16日17時時点でツイート数は1600回以上、Facebookでのシェア回数は4600以上にものぼっている。だが、読者からの反応は賛同するものばかりではないようだ。特に記事公開後からは識者や著名人も相次いで言及し、さまざまな角度からの議論を呼んでいる。
夏野剛氏「どこの会社でも内定した時が一番希望に溢れてる時」
内定者バッシングについて異議を唱えたのは、ドワンゴ取締役の夏野剛氏だ。12日、ツイッターで「どこの会社でも内定した時が一番希望に溢れてる時。それをテレビ局内定者だけの奢りのように書くのはよくない。他人から見たら羨ましい会社に内定しても入ってみたらいろんな厳しい現実に晒されて疲弊して行くのだから」と擁護した。
nanapi代表取締役の古川健介氏も13日、「まあさ、学生が内定とれたらうれしいわけですよ。実際、テレビ局ははいるの難しいわけだし。僕も受験受かった時、僕頭いい!と思って嬉しかったです。 くだらないと思いつつ、、見守ってあげる余裕あっても、いいんじゃないか?」とコメントし、内定者に寄り添う。
テレビ局に対する「勝ち組」といった過大評価に疑問の声もある。「ホリエモン」こと、元ライブドア社長の堀江貴文氏は12日、ツイッターで「記事書いてる人もテレビ局幻想に浸ってる時点で終わってる。そんなの勝ち組の時代でもなんでもないのにね笑」と綴っている。
城繁幸氏「高給取り上司をボランティアで支える仕事」
14日には人事コンサルタントの城繁幸氏が「キー局は新人にとって既にさほど魅力的な職場ではなくなっている」とブログで指摘。
「一流企業ではあるけれども、平均年齢と平均年収が高くて業界的に停滞している有名企業に今さら入るのは、往年の高給取りをボランティアで支えてあげる仕事に就くようなもの」
だと解説し、
「もし企業が、高給取りのおじさんたちをクビになんかしたりしたら、彼らのバカ高い失業給付は我々納税者が負担することになる。『みなさんの代わりに、先輩方の暮らしは僕たちが定年まで面倒見ますよ』と言ってくれているわけだから、勇気ある若者たちにエールを送りたい」
と皮肉を交えて内定者たちを「すごい」と評した。
提言型ニュースサイト「ブロゴス(BLOGOS)」にも、水島氏の記事を受けて書かれた記事がいくつも投稿されている。「プロブロガー」のイケダハヤト氏の記事(15日公開)もその一つで、イケダ氏はテレビ局では新人が「変革」に関われる機会が少ないと指摘し、「結局『面白い人ほど早く辞めていく』ことになる」「10年くらい下積みする覚悟があるなら、テレビ局に籍を置いて変化を起こそうとするのもいいと思います」などと持論を展開した。