大槌町の傾聴ボランティア団体「ひまわり」の発足式が6月7日、町中央公民館でありました。町内で傾聴ボランティア団体が誕生するのは初めてです。メンバーは14人。昨年2月から延べ32時間の養成講座を受講し、傾聴の技法やコミュニケーションの取り方を学びました。近く、町内に点在する仮設住宅を回る活動をスタートさせます。
傾聴ボランティアは1970年代に米国カリフォルニア州で始まったとされています。日本では99年にNPO法人ホールファミリーケア協会が設立されて養成講座が開かれ、全国に広がりました。
基本は悲しみや苦しみを抱えた人たちの話をひたすら聴くことです。ストレスを吐き出すことで心が軽くなります。共感してくれる相手がいることで生きる力がわいてきます。
話を聴くことはそう簡単なことではありません。技術が必要になります。相手の目を見て、笑顔で相づちを打ちながら聴きます。口を挟んだり、指示したりはしません。会話が途切れた時は、無理に続けようとはせずに待ちます。
震災直後に、当時、朝日新聞記者だった私が取材した「傾聴ボランティアもりおか」の代表藤原一高さん(61)は「人間は話すことで存在感を示したいのです。私たちは本来、人間が持っている力を取り戻すことが出来るようお手伝いをするのです」と話していました。また、ホールファミリーケア協会理事長の鈴木絹英さんはこうも語っていました。「語ることは聴く力に支えられている。あせらず、ゆっくり、時間をかけて、優しく、温かく聴きましょう」
大槌町は震災で壊滅的な打撃を受けました。被災者は町内48カ所の仮設住宅で不便な生活を強いられています。震災から3年3カ月を経過し、落ち着きを取り戻した被災者がいる一方で、心の傷を抱えたままの被災者が少なくありません。この日の発足式で、「ひまわり」代表の小林正造さん(66)は「震災からまだ立ち上がれない人もいる。仮設住宅を回り被災者の気持ちに寄り添いながら活動したい。地域に笑顔を取り戻したい」と抱負を述べました。
(大槌町総合政策課・但木汎)
連載【岩手・大槌町から】
(49) << (50)