鹿児島県南九州市が世界記憶遺産候補に申請していた知覧特攻隊員の遺書が、「日本からの視点のみ」などと指摘を受けて、選考から漏れた。ネット上では、それも当然だとの声が多いが、市では、2年後の再申請を目指すとしている。
「イツデモオマヘタチヲ見テイル ヨクオカアサンノイヒツケヲマモッテ」。29歳の特攻隊員が子供たちに当てた手紙には、家族への思いがにじみ出ていた。
朝日の編集委員は「国外で読み継がれるべき」
南九州市では、地元の知覧特攻平和会館に収蔵してある資料約1万4000点のうち、遺書や手紙などは約4000点ある。この中から、出所が明確で本人が書いたと特定できるもの333点を選んで、記憶遺産候補に申請していた。
しかし、ユネスコ国内委員会の文化活動小委員会では2014年6月12日、隊員の遺書を候補外とすると発表した。委員長の河野俊行九州大大学院教授は会見で、その理由について、「日本からの視点のみが説明されており、より多様な視点から世界的な重要性を説明することが望まれる」などと説明した。南九州市の霜出勘平市長は、この日の会見で、「残念の一言に尽きる。我々の力が足りなかった」と肩を落とした。
今回の申請については、中国や韓国は、特攻隊を美化するものだと当初から批判していた。これに対し、南九州市では、平和の大切さを世界に発信するのが目的だと説明していた。
朝日新聞の山中季広特別編集委員も、8日のコラム「日曜に想う」で、遺書について「国外で読み継がれるにふさわしい」と擁護した。市の申請では、「神風」の表現を使わず、「大死一番」「七生轟沈」など決死の覚悟を示した遺筆も外すなど配慮したとして、中国や韓国の批判はおかしいと反論している。