日本球界にキューバのトップ選手が続々 「流出」した日本人大リーガーに代われるか

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   「カストロの子供たち」が日本のプロ野球界に次々と上陸している。キューバの選手たちだ。

   日本人大リーガーの穴埋めといったところである。

「至宝」グリエルをよくぞ獲得できた

   DeNAに入団したグリエルが待望の第1号ホームランを放ったのは2014年6月11日のオリックス戦(京セラドーム大阪)だった。速球で知られる佐藤達から中堅後方に打ち込んだ。待望の一発が出てホッとした感じだった。

「満足するバッティングだった。ずっと(打てるように)努力してきたからね」

彼はキューバの至宝といわれるほどの男として知られている。よく日本に来た、と関係者が驚くほどの実力者。

   日本球界にデビューした8日の楽天戦では、3番三塁手として先発出場。4打数3安打といきなり猛打賞。打撃だけでなく、守備、走塁でもけた外れのプレーを見せた。中畑監督は

「期待通り。キューバの選手は半端じゃないね」。

   ちょっと前には巨人に、やはりキューバの主軸セペダが入った。打線不安定のチームにあって刺激剤となっている。

   日本のプロ野球界でキューバ選手の獲得を目指したのは1980年代、巨人監督時代の長嶋(巨人終身名誉監督)だった。原監督の巨人はもちろん、DeNAの中畑は教え子であることから、長嶋人脈がセペダ、グリエルの獲得に生きたのでは、と思う。

   キューバは「世界一のアマチュア」と高く評価されている。国際大会で米国や日本などプロ野球と試合をしても強さを発揮している。今年の大リーグでは19人のキューバ出身選手が開幕に名を連ねた。

月給3万円から「7年、42億円」プレーヤーに

   1959年、キューバ革命でカストロ社会主義政権が誕生。同時にプロ選手制度は廃止となり、野球選手も「国家公務員」となった。米国との国交断絶、それどころか敵国関係になった。ただカストロは大の野球ファンで野球は存続した。

   かつて日本の阪急(現オリックス)にバルボンというキューバ人二塁手がいた。革命の4年前の55年から11年間プレー(最後の1年は近鉄)。俊足好打、攻守で活躍。いきなり最多安打と打ちまくり、通算308盗塁(タイトル3回)を記録した。

「(キューバに)帰りたいけど、帰ったらもう(キューバから)出て来ることはできないね。つらいけど仕方ないよ」

こう言って残念がっていたものだった。チコと呼ばれて親しまれ、神戸に店を出したり、阪急の通訳もした。

   大リーグにもキューバ選手はいたのだが、革命後は亡命してプレーする歴史をたどった。それが現在、ドジャースのプイグは「7年、42億円」で、ホワイトソックスのアブレイユは「6年、68億円」という契約を結んでいる。キューバではせいぜい月給3万円程度というからウソのような話だ。

   セペダやグリエルは日本-キューバ友好の一環で来日している。彼らの年俸の10%は仲介料の形で国に入るという。いわゆる「レンタル選手」である。

   日本球界は政治的トラブルがない形なら大歓迎で、今後もキューバ選手を求めるだろう。なにしろトップスターが毎年のように大リーグにいってしまう状況だ。レベルの低下に悩んでいただけに、世界が実力を認めるキューバ選手は、穴埋めには最高だ。新しい野球が見ることができる楽しみが増えた。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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