小保方晴子氏のSTAP細胞論文疑惑にからんで、新たな難問が浮上している。
すでに国際出願したSTAP細胞に関する特許が今回の事態で、各国特許庁での審査に移行しないまま宙に浮いているからだ。手続きの締切日はあと数か月に迫っていて、これを超えて取り下げになると、第三者に特許で先行される心配はないのか。
締切日は14年10月24日
STAP細胞の論文が英科学誌「ネイチャー」に掲載されたのは、2014年1月30日。ただ、その2年前に特許出願に向けて動いていた。理研と東京女子医科大、米ハーバード大の3機関は12年4月24日、STAP細胞の作成法について、米国特許商標庁に仮出願を済ませている。
弁理士の栗原潔氏のブログによると、アメリカの仮出願制度は、「1年以内に通常の出願を行なうことを前提とした出願であり、通常の特許出願と比較して書式上の要件が簡略化」されている。「先に仮出願して出願日を確保」しておくことができ、「後は自分で公表しようが、独立して発明した第三者が公表しようが、出願しようが、先に出願した方が優先される」という。
1年後となる13年4月24日、3機関は特許協力条約にもとづいた国際出願(PCT出願)を行った。複数の国に出願する際の手続きを簡略化した制度だ。特許庁ウェブサイトによると、「国際的に統一された出願願書(PCT/RO101)を1通だけ提出すれば、その時点で有効なすべてのPCT加盟国に対して『国内出願』を出願することと同じ扱いを得る」というものだ。米国、英国、フランス、ドイツ、中国、韓国など約150か国が加盟している。
ただし、特許の審査は国ごとに行われるので、国際出願しただけで手続きは完了していない。栗原氏のブログによると、各国で実態審査をするには「国内移行」が必要で、締切日は「優先日」から原則2年半だ。締切日までに国内移行しないと特許出願が実質的に取り下げとなり、STAP細胞特許の場合は14年10月24日が期日となるが、現時点ではどの国にも国内移行は行われておらず、完全に「寝かされた状態」になっているという。