フジテレビ系の情報番組「Mr.サンデー」が2014年6月8日夜、小笠原諸島・西之島の噴火を船からの迫力ある映像で紹介した。山頂から数秒ごとに白い噴煙が上がり、「ズドーン」という爆発音が響く。西之島の最新の生々しい姿に注目度は高かった。
しかし、島から約50メートルにまで接近して取材した危険な行為だけに、賛否両論が出ている。
気象庁や海保では、島の周囲に警報を出していた
放送によると、今回のプロジェクトは、ハワイ島など世界中の火山を撮影・研究している火山写真家の白尾元理(もとまろ)さん(61)の調査に同行する形で行われた。
漁船2隻をチャーターして、父島から7時間かけて現場へ。6月3日未明に、風下に当たる西之島西側から数キロの海域まで到着した。西之島が赤い噴煙を上げる姿が映されたが、番組では、火山弾は火口付近に落ち、船まで飛んでくることはないと説明された。
夜が明けた後、船長判断で直近まで寄ることになり、今度は島の東側に回った。島から約50メートルまで接近したと紹介され、黒く固まった溶岩から大量の水蒸気が白く噴き出す迫力ある映像が流された。この日は、計17時間半も船上で撮影を続けたという。
今回は、メディアで初めて海上からの撮影に成功したといい、島の成長を捉えた世界的にも非常に貴重な映像だと番組で解説した。白尾さんは、「だれもやんなくていいの?ということですよね」と話し、司会の宮根誠司さんは「うちの番組もえらい番組になってきたねえ」と感想を漏らしていた。
とはいえ、噴火を続ける西之島に接近することは、やはり危険だった。
海上保安庁では、13年11月の噴火直後から、島の周囲に航行警報を出していた。また、気象庁も、火山噴火予知連絡会で検討した結果、14年2月に危険警報を出した。これに対し、フジテレビでは、周辺海域に行ってもよいかどうか、5月中旬に海保に相談を持ちかけた。
「警告を受けて自粛を求められた事実はない」
海保の報道官がJ-CASTニュースの取材に答えたところによると、航行警報を出していることから、フジテレビに対しこのとき、危険なので西之島に接近しないで下さいと要請したという。
それでもフジ側が接近取材したことについては、「現場の状況によって危険度が違いますので、その是非について一概には答えられません」と話した。フジ側が噴火に巻き込まれた場合については、「海難救助が任務ですので、それを放棄することはできないです」と言っている。
気象庁では、2014年6月3日にレベルを上げて西之島の周囲に入山危険警報を出したが、フジ側からはそれまでに相談はなかったといい、接近取材を知ったのは放送後だった。警報では距離情報を入れていなかったため、11日になって、島の中心から6キロと定めて警報を出し直した。海保でも、これを受けて、同じ日に距離情報を入れて航行警報を出した。
一方、フジテレビの広報部では、取材に対し、今回の件で海保に相談したことは認めたものの、航行情報は、「火山活動継続中、溶岩、煙及び火山ガスを噴出、付近航行船舶は注意されたい」というものだけだったと答えた。海保がフジ側に接近取材をしないよう要請したとしたことについては、「危険だと警告を受けて自粛を求められた事実はありません」と言っており、認識が食い違っているようだ。
フジテレビには、視聴者からの意見が数件届いているというが、「ほぼ称賛のご意見で、批判はございません」と言っている。
ネット上では、フジの接近取材について、賛否が分かれている。疑問の声としては、「捜索やらなんやらでまわりがめいわくするんだよ」「雲仙普賢岳での悲惨な事故の経験が全く生かされていない」といった声が上がった。一方で、「自己責任でやらせりゃいいよ。戦争の取材だって危険だろ」「これはむしろフジテレビGJ!じゃないか」といった声も確かに出ていた。